日清食品の創業家3代目、安藤徳隆氏の初めての書籍になる。徳隆氏は、1977年の生まれで、今年48歳。創業家が事業承継するタイミングは、いまは30代後半から40代前半だから、38歳の社長就任は脂が乗り切っていた年齢である。
現在は日清食品ホールディングス副社長で、グループ中核企業の日清食品代表取締役社長である。就任から10年目で、ふたつの大きなヒットを飛ばしている。先ほど、わたしが初めて食してみた「カレーメシ」(2025年、売上300億円超)と「完全栄養食品」(好調な売れ行き)である。
とりあえず、どちらの商品も試食したことがない。まずは、「カレーメシ」に挑戦してみることにした。カレーメシは、2代目の宏基CEO(父親)の時代に手掛けれたブランドで、「これ、何か違う気がするんだよ。リブランディングしてくれないか」(宏基氏)と息子の徳隆氏に渡された商品である。
当時は、「日清カップカレーライス」という名前で企画が始まっていた。2013年の夏ごろのことらしく、徳隆氏が社長に就任する2年前である(P.36~37)。宏基氏のときはレンジ調理食品として開発が進んでいたものを、徳隆氏は、カップヌードルと同様な湯かけ調理に変更している。
本書にも書かれているように、調理法の変更理由は、レンジ調理ではどこでも(キャンピングや山登り)食すことができないからだった。わたしは、この説明だけは不十分だと感じた。プラスして、カップヌードルと同じ調理法が、「日清」らしい調理作法になるからだろう。
ブランド名も、ありがちな「カップカレーライス」から、あえて新しいカテゴリーに挑戦する意味を含めて「カレーメシ」に変更した。コミュニケーション戦略も、従来タイプのものからかなり奇抜なCMに変えた。インパクト(認知率)を狙ったからだろう。主力商品のカップヌードルが爆発して、そのあとにカレーメシが突如現れるという趣向のものだった。
徳隆氏は、経営者であると同時に、クリエイターでもある。CMの制作現場にも自ら関与している。徹底的な現場主義は、コピー制作やマーケティング立案にも参画していることに現れている。また、慶応大学大学院出身のエンジニア(専門は生化学)でもあるから、生産や開発の知識も持っている。マルチタレントなマネージャーでもある。
さて、味の方はどうだろうか? 思い立って、駅前のイトーヨーカドー高砂店にカレーメシを買いに出かけた。1Fには、たくさんの種類の「カレーメシ」がシリーズで陳列されていた。20種類はあったろうか?
たくさんあったシリーズの中から4種類(ビーフカレー、シーフードカレー、ビーフカレー完全めし、ハヤシカレー)を購入してきた。本日のランチタイムに、「カレーメシ 中辛ビーフカレー」を自ら作ってみることにした。息子は、シーフードカレーを持って行ったが、食後の感想はいまだ送られてきていない。
わたしの感想は、、、、 インストラクション通りに、ポットから熱湯を注いでみた。待つこと5分。ふたを取ってから、説明書きの指示通りに30秒間、お箸でくるくるとかき混ぜた。説明書きの通り、カップに入ったカレーライス(=カレーメシ)が出来上がった。
個人的な感想は、「可もなし不可もない」である。そもそも、ジャンキーに作られているのだから、美味しいとか美味しくないとかのグルメ視点で、商品を評価してはいけないだろう。マックと同じでジャンキーに、繰り返して購入するジャンルの商品である。
そのため、あと2カップ(別のサブブランド)でストックしてある。評価が変わるかどうか?二日後が楽しみだ。
本の紹介が、 カレーメシの話だけで終わってしまいそうだが、第1章「カレーメシの誕生の舞台裏」を読めば、若い3代目経営者の能力が相当なものであることがわかる。
本書は、そのあと2章から7章までと続いていく。3時間もあれば、すらすら読める内容になっている。とても読みやすい。★5つの評価である。
ちなみに、本書は、安藤氏自身が書いた本ではない。20時間におよぶインタビューを武居氏(日経BP)が整理したものである。だからと言って、内容の評価が下がるわけではない。立派な5つ星作品である。
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