【紹介記事】日刊工業新聞社(2025年9月8日)、著者登場/小川孔輔氏『ローソン』

 本日(9月8日)の『日刊工業新聞』(24頁)、「著者登場/小川孔輔氏『ローソン』」という書籍紹介のインタビュー欄で、拙著が紹介されている。ずいぶん前のインタビューだったので、そのことを忘れかけていた。それでも、「Newsウェーブ21」のコーナーに掲載されたインタビュー記事は、とても好意的な内容だった。感謝。 
 
 1時間ほどのインタビューを記者(阿部俊介氏)が簡潔にまとめてくれている。わたしの生涯最初の単著『世界のフラワービジネス』(1991年)は、『にっかん書房』(日刊工業新聞社)からのものだった。インタビューを申し込まれたときに、とても懐かしい気持ちになった。
 なお、絶好調のローソンだが、いくつか課題もある。今回の書籍については、たくさんのメディアからインタビューを受けてきた。これまでは良い面のみを答えてきたが、今回ははじめて会社の課題も話すことにした。もちろん、深刻な課題ではない。

  
 著者登場/小川孔輔氏『ローソン』:
 『日刊工業新聞』2025年9月8日号(24面)

 
 ■多様性重視で成長、誇れる経営
 
 -ローソンをテーマにした理由は。
 「玉塚元一元社長(現ロッテホールディングス社長)から電話をもらったことが執筆のきっかけだ。以前書いた『マクドナルド失敗の本質』を読んで、ローソンを取材しないかと提案された。その後、ローソンの社長は竹増貞信氏に代わったが、訪問してみると非常にユニークで温かみのある社風に引かれた。トップダウンの厳しい経営ではなく、『ほんわか柔らかい』社風というのが印象に残った。温かい社風に触れて本を書く決意を固めた」
 
 -主要テーマと読んでもらいたい層は。
 「ローソンが大切にしている多様性(ダイバーシティー)で、ローソンの社員にこそ読んでほしい。ローソンは社員が自社の他部門や子会社のことを十分に知らず、愛社精神はあっても会社への自信やプライドが不足していると感じていた。この本で『あなたはこれだけ良いことをしている』と伝え、自信を育んでもらいたい。オーナーやベンダー、取引先にも手に取ってほしい。ローソンの内実を深く知ることで、より良い関係が築けるだろう」
 
 -ローソンの特徴や強みは。
 「まず、社風が独特だ。カリスマ的なトップダウンではなく、社員同士が近い距離で柔らかく、温かい環境だ。顧客からも『フレンドリー』と評価されている。一方、竹増氏のリーダーシップは若手や中堅社員からの評価も高く、株主総会の進行も非常に配慮が行き届いていた。コンビニらしからぬ、多様な業態を持つことも大きな強みだ。スーパー一体型コンビニやオーガニック志向のナチュラルローソン、傘下の成城石井、無印良品との提携など、同じ会社の中に多様性があって、それがイノベーションとして成長につながっている。オーナーやベンダーとの信頼関係も良好だ」
 
 -取材を通じて見えてきた課題は。
 「社員の自信不足だ。会社の良い取り組みが知られていない。これを本書で解消したいと思う。予想もしていなかったのは北海道稚内での地域共生モデルだ。本書に詳しく書いたが、人口が少ない地域で売り上げを伸ばし、他社がまねしようとする成功例になっている。また、ローソンにまだ生え抜きの社長が誕生していないことも課題だろう。外部からの社長招へいが続いている中、竹増氏の存在感がこれからどう高まっていくか注目している。加えて、セブン-イレブンとの対比も印象的だ。セブンは強固なトップダウンと成果主義で成功したが、最近は経営の混乱で苦境にあり、新たな挑戦の阻害要因になっていた。対してローソンは多様性と協調性を重視し、柔軟な成長を目指している」

 -ローソンの今後と読者に伝えたいことは。
 「竹増氏が提唱する『ローソンタウン』構想は重要な柱で、KDDIや三菱商事もこの方針を支持している。ローソン社員には、自社の優れた点に自信と誇りを持ってほしい。一般読者には、本書を通じてローソンの商品以外の姿を知ってもらいたい」(阿部俊介)

 ◇小川孔輔(おがわ・こうすけ)氏 法政大学名誉教授
 78年(昭53)東大院社会科学研究科(経済学)中退。79年法政大経営学部助教授。82年カリフォルニア大留学。86年法政大経営学部教授、04年同大経営大学院イノベーションマネジメント研究科教授、22年同大名誉教授。経営学者、エッセイストとして、専門のマーケティング分野など著書多数。秋田県出身、73歳。

 コンタクト:『ローソン』(PHP研究所 03・3520・9630)

コメント