多年に渡る園芸業界への貢献により、友人の前川茂さん(三豊園芸)が黄綬褒章を受章することなった。明日(9月6日)、リーガホテルゼスト高松で、受賞記念祝賀会が開催される。JFMAからは、わたしと松島事務局長が祝賀会に参列することなっている。前後のスケジュールが多忙のため、羽田ー高松を日帰り往復することになってしまった。
当日、ご本人から、冒頭の挨拶を依頼された。晴れの席での挨拶は苦手なのだが、同じうさぎ年の花業界仲間としては断る理由がない。わたしの挨拶の後ろが松島さんらしい。「先生のあとだと、やりにくいなあ」と松島さんはぶつぶつ。
いまから10年前、息子の結婚式では、親族を代表しての父親の挨拶が8分超してしまった。家族からは大顰蹙をかっている。この場合は3分から5分程度だろう。挨拶の文言はいつも出たとこ勝負なのだが、めずらしくいま事前の準備を始めた。
ちょうど良いお手本が2020年に刊行された『インタビューで綴る花産業の戦後史(1945年~2020年)』(JFMA・小川孔輔編)で見つかった。この本の中で、前川さんにインタビューしていた。オリジナルは、『JFMAニュース』(2017年5月30日)の「トップインタビュー」である。前川さんに対談していただいている。
「あとがき」(前川さんへのメッセージ)で、インタビューの印象を述べている。まずは、その全文をこの後で紹介したい。記念式典での挨拶は、このメッセージに基づいて再構成するつもりでいる。
<前川さんへのメッセージ> 2020年5月18日
戦後の高度成長期に、米や野菜から花栽培に転じた農家が日本各地にはたくさんいました。花に転じた若者たちが、花市場の担当者と組んで産地形成に励みました。苦しい時代もありましたが、積極的に施設に資金を投じて、1980年代の終わりに花き産業は、一兆円を超える規模になりました。
三豊園芸の前川茂社長も、メロン栽培から花苗生産に品目を切り替えた生産者の1人でした。現在、香川県丸亀市の隣町(三豊市)で、ハイビスカスやブーゲンビリア、オリーブなど多品目の苗を生産しています。
四国はランの栽培が盛んな場所でしたが、20年前からコチョウランの市況が低迷して、栽培をやめた農家が続出しました。前川さんは、撤退した農家の温室を居抜きで買い取り、栽培品目を拡大していきます。3つの農場で花苗の生産を続けていますが、木立性のブーゲンビリアの供給で三豊園芸は日本一の農場です。
拙著『花を売る技術』(誠文堂新光社、2006年)を読んで、MPS存在を知り、IFEX(国際フラワーエキスポ)のブースを訪問してくださいました。そのご縁で、2007年からはMPSに加入していただいていました。MPSにとって前川さんは貴重な花生産者です。
三豊園芸は、特徴のある新種の花苗を得意としています。「だからといって、特別に高く売れるわけでもないです」(前川さん)という現実をとてもはがゆく思います。ユニークな取り組みとしては、サイネリア、ペンタス、ビオラ、リナリア(=姫金魚草)、カリブラコアなどの小花を、エディブルフラワーとして香川県の割烹(約10店舗)に納めています。そのお店はほぼ言い値で引き取ってくださるようで、エディブルフラワーは将来的に大きなビジネスに育つ可能性があります。
いまは、花苗から営業までの仕事を、息子さんに全面的に任せているようです。それができる前川さんのような生産者は幸せだと思います。なお、ご子息の直人さんとはJFMAの欧州ツアーで、フランス、ドイツ、スペイン、オランダの花市場やスーパーをご一緒させていただきいことがあります。仕事熱心で明るい青年です。
ご本人もインタビューの中で述べているように、前川さんは人間関係をとても大切にされる方です。藤原会長(JF神戸生花)など同世代の市場関係者が集まるJFMAの会合にしばしば顔を出されます。東京でも関西でも場所に関係なく、実に飄々と現れるところが前川さんらしいです。
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