郵便受けに、一通の案内メールを見つけた。株式会社ヤオコーの川野幸夫会長と川野澄人社長の連名で、「持株会社設立のご挨拶」という案内状だった。2011年に、『しまむらとヤオコー』というビジネス書を小学館から刊行した。2001年ごろ、川野幸夫会長から埼玉県比企郡小川町(当時、人口3万人弱)の出身企業2社(ファッションセンターしまむらと食品スーパーのヤオコー)が、東証一部上場企業になっている。そういえば、わたしの苗字も「小川」である。
ヤオコーの経営陣(川野幸夫さん、犬竹一浩さんなど)と、は昨年の夏(7月13日)に亡くなられた創業者(島村恒俊さん)と2代目社長(藤原秀次郎さん)にインタビューをして、「小川町経営風土記」を、『チェーンストアエイジ』(当時、ダイヤモンドフリードマン社)に連載させてもらった。
連載が終わった翌年に、『しまむらとヤオコー』を単行本で出版できた。紙の本は絶版になっているが、いまでも電子版はそこそこ売れている。しまむらもヤオコーも、その後は若い経営者に世代交替している。
しまむらは、独自路線で買収も合併もせずに今に至っている。一方のヤオコーは、ディスカウント系のローカルスーパーの数社を傘下に収めてきた。首都圏から出てはいないが、業績はすこぶる順調である。その総仕上げが、持株会社「ブルーゾーン・ホールディングス」の設立である。
川野会長が第一線から退く年齢に到達している。澄人社長をアシストするヤオコーの経営陣も若返っている。食品スーパーの子会社(エイヴイ、フーコット、せんどう)も増えてきたので、持株会社の設立になったと思われる。
ローカルスーパーの雄として、全国展開(ナショナルチェーン)を指向するロピアやオーケーとは一線を画している。生鮮と総菜に強みを持つスーパーだが、近年は低価格ブランドも開発している。プレミアムスーパーでありながら、それでは取り切れない顧客をフーコットなどでカバーしようとしている。
首都圏から外には出ないで、マルチブランドでローカル市場を面的に攻めていく戦略である。ベルクやマミーマート、日高屋など、埼玉の企業は不思議と首都圏から出ようとしない。人口が厚くて豊饒な海には、まだ魚がたくさん泳いでいるらしい。
ナショナルチェーンになるためには、生活文化が異なる消費者を相手にすることになる。多大な物流コストを掛けてまで、困難な市場開拓に挑戦するタイミングではまだなさそうだ。若い経営者は、次のステージに出ていく頃合いを見ているのだろう。
大きいことばかりがよいとは限らない。しかし、新しい戦いの場を求めて、関東ローカルの企業から将来はナショナルチェーンに飛躍するため、敢えていま持株会社にしたようにも思う。飛躍の年は、何年後になるのだろう。
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