第7章では、「ロック・フィールド」が登場する。2003年から学生のフィールドワーク(大宮、新宿南口、新浦安、吉祥寺、立川、千葉など)でお世話になっている。今回は、学生が新浦安ルミネで実施した調査や雑誌原稿に連載された記事などを活用している。
「ロック・フィールド」『ホワイト企業(仮)』生産性出版 (V1:20140428)
1 ロック・フィールド:店頭観察より
<困ったときのRF1(アールエフワン)>
立川に住んでいる親しい女性(45歳)から、「問い合わせ」に対する返信のメールが戻ってきた。わたしが「ロック・フィールド」の店頭業務を調べているのを知って、利用者としての感想文を送ってくれたのである。
食べ盛りの二人のお子さんを持つ共働き主婦の彼女は、仕事帰りに駅ナカをよく利用している。とくに立川駅改札内にある「エキュート立川」のFR1(アールエフワン)は、いまはお気に入りの店舗のひとつになっている。
おはようございます。小川先生。取り急ぎ。
困ったときは、アールエフワン。中で作業をしていても、混んできたら顧客対応してくれます。(値段は)やや高いと思うけど、廃棄したことがないから、利用者としては満足しています。でも、最近は揚げ物に飽きてきたかな(笑)。
サラダがきれい。他の店のグラム売りだと単価が安いものばかり入れられて、それ以降はその店ではなにも買わなくなりました。アールエフワンは均等に入れてくれる。そして、店員と会話があります!
ここがいいところです。(2014年4月22日:8時11分)
彼女にメールを送ったのは、6年前に、わたしが学部生と一緒に、「ロック・フィールド(RF1)」の3つの店舗(吉祥寺、新浦安、立川)を調査していたとき、「店の対応が悪い!」とさんざん文句を言っていたからである。
エキュート立川の開業は2007年10月である。昨年(2013年)の夏、しばらくぶりで食事をする機会があった。そのとき、彼女のRF1(エキュート立川店)に対する評価が正反対に変わっていたので驚いた。いったい何が起こったのかと思い、詳しくその理由を尋ねたわけである。
「客の対応が悪い」と言っていた理由はわかっていた。不満の内容は、具体的には、「長い時間を待たされるから」と「店員が、(並んでいない客の)横から割り込みを許してしまっているから」だった。
彼女は、“フォーク並び”でないと絶対に許してくれない原理主義者である。待ち方のルール順守にうるさい彼女が、立川店への評価を180度変えていた。この6年間で、ロック・フィールドの社内とRF1の店舗では、いったい何が起こったのだろうか?
<2008年1月18日、新浦安駅ルミネ店にて>
2007年9月~11月にかけて、学生たちと「ロンロン吉祥寺店」と「エキュート立川店」でフィールドワークを実施した。現場観察から、「接客がもたついている間に客溜まりができ、待てない顧客を取り逃がしている可能性」をロック・フィールド本社に報告していた。
客の待ち(行列)を調べてみることを提案したところ、社長室の協力を得て、「客溜まり仮説」を検証する調査が実現した。2008年1月18日(金)、ピーク時間帯の3時間(17時~20時)、場所は新浦安駅(ルミネ店RF1)である。
店頭観察からわかったことを、学生たちが報告書にまとめてくれた(図表1「調査報告書:新浦安駅ルミネ店」。
レポートは、「店頭観察結果」と「業務改善提案」の部分に分かれている。提案部分は、二つの提案にまとめている。
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「調査報告書:新浦安駅ルミネ店」(店頭観察)
(1)調査概要
日時:2008年1月18日(金)、ピーク時間帯(17時~20時)。
場所:京葉線新浦安駅ルミネ店(RF1)
現場状況:レジ台数4台、接客従業員6~7人(ピーク時)
調査担当者:土生淳子、関口真人、斉藤惟人、堀亜由美(経営学部小川セミ)
(2)現場観察の結果
新浦安駅の乗降客数は、一日平均で約10万6800人(2006年JR調べ)である。駅ビル内のルミネ店舗は、改札口のすぐ外側にある。新浦安で乗降する人は駅ビルを通って通勤・通学しているので、10万人すべてがFR1の潜在顧客である。ピーク時間帯(3時間)で、通行人と購入客の観察を行った。4人が手分けして、①通行量調査、②会計所要時間調査、③客溜り調査、④3段階調査を担当した。
<通行量調査>
調査期間(合計144分)の店前通行量は1806人、会計所要時間(商品の盛り付けから会計終了まで)は、最低35秒、最長4分、平均が2分30秒だった。最短の35秒は、スイカを利用した顧客である。