読書感想文優秀者2名を掲載する。
(海津まりな、熊倉千紘)
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『外食はやっぱり楽しい』を読んで 4年 海津まりな
私の家の周りには様々なファミリーレストランがあるため、よく家族でランチを食べに行く。私が行くお店も本書にたくさん載っていた。普段何気なく食べに行っているお店だったが、創業当初の苦労や経営者の考え方など知らなかったことがたくさんあったため、とても面白かった。本書で述べられていたのは外食業の産業化を果たした経営者たちの言葉であったが、そんな中から今後社会に出てビジネスをする上で大事だと思った点を三つ挙げたいと思う。
まず一つ目は、『お客様第一優先』の考え方である。
サイゼリヤの会長正垣さんは「お客さんが来ないのは、自分が間違っているから」という考えのもと、すべての事柄を自分中心ではなくお客様優先で考えた。「失敗しているときは必ず自分のことを考えてしまっているもので、お客様の立場で考えれば必ず正しい道に戻る」と述べていた。実際にサイゼリヤのメニューは安くておいしい。だから、私は先日も家族でサイゼリヤに行った。お気に入りのメニューがいくつかあり、それぞれの値段も把握済みだ。美味しいのに気軽に食べられる価格を追求できたのは、お客様の立場に常に立っていたからこそだと考えられる。
また、注文を終えると必ずするのが「間違い探し」だ。キッズメニューの裏にあるエンターテイメントである。難易度が高く、いつも全て探し終える前に料理が運ばれてきてしまう。このおかげで待ち時間も長く感じず、むしろ「料理が来る前に全部探してやる!」という気持ちにさせられる。絵は 1 カ月ぐらいで定期的に変わるため、ちょうど行く度に新しいものになっている。これもお客様の立場にたった上での工夫だと感じられる。
二つ目は、『徹底的な下準備』をする事である。
日本 KFC 元社長の大河原さんはアメリカから持ってきたものをそのまま受け入れる事をしなかった。アメリカから来た企業が多くの日本人に受け入れられたのは、大河原さんが日本人の口に合う鶏肉を研究し、市場分析を徹底してマーケットをよく理解していたからである。
すかいらーく創業者の横川さんにおいても同様、300 店出店して赤字店をひとつも出さなかったのは、出店の査定が厳しかったからと述べている。数多くの要件を全てクリアしないと出店の許可を出さないように徹底していたということから、最初の土台がしっかりしていればその後はそう簡単に崩れないという事がわかった。
三つ目は、『常にアップデートし続ける事』である。
物語コーポレーション特別顧問の小林さんは「開店した店を完成型だと思わないこと」を掲げている。絶えずリフレッシュしていかないと開店の翌日からどんどん劣化していくそうだ。たしかに、使い古したメニュー表や、色褪せた看板のお店は良い印象を抱かない。常に前向きな姿勢が見られるお店はまた来たいと思う。
味に関しても同じである。私の好きなすかいらーくグループガストのメニュー、「チーズインハンバーグ」は人気ナンバーワンのメニューであるが、常に改良を重ねているそうだ。ソースの濃さや火加減、チーズ配合などまで改良し、知らないうちに進化し続け、人気ナンバーワンをキープしている。
こんなに多くのお客さんがナンバーワンに選ぶほどのメニューでも、現状に満足せずより良くしていこうとする努力が自然とお客様の心をつかむのだと感じた。
最後に、本書は飲食店の話であったが、私が将来なりたい職業である美容師も同様、以上に述べた三点が非常に重要になってくると感じた。
美容師は目の前のお客様を美しくする事を一番に考え、時には髪の毛の痛みを考慮してオーダーを断ることも必要である。来てくださるお客様に感謝し、真摯に向き合うことは絶対に忘れてはならない事である。
また、一人前になるまでは下積み期間として猛練習する。この期間にしっかりとした土台を作れば作るほど、安定した集客を得ることができるだろう。下積み期間といわず、学生のうちから出来ることはしていきたいと思う。
そして美容は常に新しく進化するため、自分自身の技術や知識のアップデートが不可欠である。一人前になったからといって満足してしまえばすぐに客は遠のいてしまうだろう。
より良いものを提供できるように現状に満足せず日々精進していきたい。
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『外食はやっぱり楽しい』を読んで 4年 熊倉千紘
外食チェーンは今や日本全国で目にするようになり、私たちの生活に欠かせないものになっている。そんな身近な外食産業だが、いつから産業化され、どのようにチェーン店が定着してきたのか、自分の働く店はどのように生まれたのか、考え始めれば自分が何も知らないことに気が付いた。
本書は 13 人の先人たちの創業当時の苦労話や成長していく過程がインタビュー形式で分かり易くまとまっている。私自身がアルバイトをしていることもあり、ピザーラ創業者淺野氏のインタビューに特に興味を持った。その中で、特に印象深い点が 3 点ある。
1点目はピザーラの成長のきっかけでもあるジャパンスタンダードについてだ。ピザーラは、“日本人のための味”をコンセプトに掲げている。本書の中で、競合のドミノピザが世界戦略の中で立地を移して、テイクアウトに力を入れていると記されていた。
実際に私が働くピザーラも以前までは市内で独占状態だったが、昨年すぐ隣にドミノピザがオープンした。オシャレな内装でイートインスペースも兼ね備えたドミノピザの目新しさから、顧客が大量に流れてしまった。しかしピザーラの売り上げは一時的に減少したものの、直ぐに客足は戻ってきた。その際にお客様が口を揃えて言ったことは「ピザーラは口に合う、ドミノは海外の味」だった。
このようなお客様の言葉や「いかにおいしい商品を提供するかを考えていく」という会長の言葉から“ジャパンスタンダード”というコンセプトが商品で体現されていると実感した。
2点目は、コアのお客様がいるという強みについてだ。ピザーラは 85%が固定のお客様に支えられていると記されていた。
アルバイトを始めるまでは、ピザというとイベント時に食べるイメージがあった。しかし実際には週に 2 回以上、昼食や夕食として頼む方が多く、特にお年寄りが多い。常連の方が多いことから、注文の電話にでると「あら熊倉さんね!」と覚えていただいたり、デリバリーは都心と比べ 3 倍ほど配達圏が広いにも関わらず、地図を見ずに配達へ向かうことができる。
このように固定のお客様に支えられているからこそ宅配ビジネスが活性化し、「デリバリー≠ピザ」になり競争が激化している中でも、成長を続けられているのだと実感した。
3点目はピザーラキャラバン(ピザの移動販売車)についてだ。
実際に、全国にある 23 台のうちの 1 台を私が働く本庄店が運営している。本庄店の場合は、半径 20 キロ圏内にピザーラがない長野県や山梨県、群馬県の山奥の地域などにピザの出張販売を行っている。近くにピザ屋、ましてや飲食店も少ない地域に出向くことで、噂が広まり、地域中の方が買いに来てくださる。そのため店舗以上の売り上げを 1 日で得ることができているのだ。
また、台風 19 号により長野県で千曲川が氾濫した際に、被災地支援にも出向いた。高速道路も閉鎖されており、瓦礫だらけの中販売を行ったことで「あの時はお世話になったから」とわざわざ店舗まで 2 時間以上かけて買いに来てくださる方までいた。
店舗拡大に伴い出店できる場所が限られていく中でも、店舗以外での売上が得られるような工夫や、他業態外食への展開からフォーシーズとしての成長に繋がっているのだと実感した。
このインタビューから、ピザーラの成長過程や会長の想いなど、自分の働いている会社のバックグラウンドを知ることができ、大変良かった。
最後に、13 人のインタビューの共通点として、松屋の「常連への対応」、リンガーハットの「従業員満足度の重要性」、コメダの「地元のお客さんを大事にする」などを筆頭にどの企業も“人”を大切にしているという点があった。重心の置き方に違いはあるものの、どの経営者も軸を忠実に守って、フォーマットを築くことで、多店化を進めていったことが分かった。
本書から外食の歴史を知ることができ、外食産業の黎明期にこのような人達がいたからこそ、今日の日本の外食チェーンは発展していったのだと感じた。 また外食に限らず、他のビジネスにも応用が利くことも多く、「外食は苦しいけど楽しい」という事を学ぶことができた。コロナ禍で思うように外食ができない中、今後外食産業がどのように発展し、変化してゆくのか注目していきたい。