夜の10時まで絶対に起きていられないと思った。ところが、昨夜は、10時から始まった「カンブリア宮殿」(テレビ東京、月曜)を90分も見てしまった。ヤオコーの川野会長からお知らせをいただいていた。見ないわけにはいかないだろう。
90分番組の最初は、30分間、九州のスーパーの話だった。申し訳ないが、ヤオコー川野さんの前座だよな。BBQでアルコールが入っていたので、すごく眠かった。川野さん、早く出てきてくれないのかな。
10時半をすぎてからやっと、ヤオコーさんの番になった。南古谷店のクッキングサポートコーナー、担当の田中美智子さんが、例のパートナーさんの服で、画面に登場してきた。この人の一日を、『しまむらとヤオコー』では、第1章の半分を使って書いている。編集の園田さんには好評だ。
そういえば、今週末には、同じ南古谷店で、花畑裕香さん(法政大学院卒、中小企業診断士、JA徳島のコーディネーター)の指揮で、「すだちプロモーションキャンペーン」(2010年第1回)が実現する。
今週末の28,29日に実施日が迫っている。小川ゼミの学生も応援に行く。南古谷店と若葉ウォーク店である。埼玉にお住まいで、近くの方、お立ち寄りください。
さて、昨夜の視聴者たちは、カンブリア宮殿のヤオコーを、どのように見ただろうか?ヤオコーの素晴らしさは、経営としてうまく伝わったのだろうか。ちょっと不安になる。
もっと詳しく解説をしてあげないと、何でヤオコーのパートナーさんたちが、経営に貢献できているのかがわからないのではないだろうか。ちょっと解説をしてみたい。
従来の総合スーパーの商品の売り方が、ディスカウント路線だとする。それに対して、地方発のスーパーで、ヤオコーが地元密着型の「個店経営」が成功しているのは、商品の提供方法がちがうからだ。
例えば、昨日の放映では、サーモンの例が出ていた。本部がサーモン企画でたくさん仕入れて、店舗では売れない場合を想定していた。あの状態は、集中仕入でプッシュ型の商品調達をしているシューでもよくありがたいな設定である。しばしば、バイヤーの買った商品が、店頭でも余っている。さあ、どうするか?ヤオコーは、ディスカウントの店とはちがう。
画面に登場したヤオコーの店長(浦安店)は、サーモンを小さくおろして、刺身で売ることにした。ディスカウント路線の店では、できるだけ安く「素材で」売ることに注力する。
しかし、ヤオコーは、異なる個別店舗のニーズに合わせて、加工したサーモン(生でも、焼いても、燻製にしても、スープにしてもよいのだ!)を売るのである。
九州のスーパーも同じことをしていたはずである。個別の店舗で調整をするのである。
衣料品とは異なり、食品スーパーでは、来店客が一日に3000~5000人もいる。土日だと8000人からのお客を相手に商売ができる。来店客の7人にひとりに買ってもらえたら、1000個の商品を売ることができる。単価が200円でも、単品で20万円である。これが10アイテムあれば、それだかで200万円の売上である。コンビ二の売り上げが、一日60万円である。
話を戻すことにする。同じ素材(サーモン)でも、お客の顔を見ながら加工できたら、売り方を考えられる。これを、生鮮部門の担当者とパートナーさんが協力して行う。素材のサーモンを、店頭調理で別な商品に変えてしまうのである。
キッチンサポートの田中さんたちは、調理方法を工夫して、店長と部門長が考えた「即興販売キャンペーン」を支援するのである。この仕組みがあるから、たくさんの素材を多様な形で売り切ることができる。ある種の販促マシーンと考えてよいだろう。
セントラルバイイングで、加工無しのディスカウント店だと、その余裕はない。店内加工と、個店に権限があるからこそできる芸当である。ここまで、テレビでは解説が欲しかったなあ。
わたしも、去年、ヤオコーの上里店で、同じような体験をした。テレビはやらせではないのだ。
2009年7月、徳島すだちプロモーションの初日、バルクで仕入れた「すだち」を、当初は「ばら売り」(一個ずつ)していた。ついでに、3個パックも作ってみた。しかし、目立たない、売れない、売れてもたいした金額にはならなかった。その場で、作戦会議を開いた。群馬の中之条店にいる塩原くん(群馬のブロック長)と電話する。
二日目、上里店に塩原部長が応援に入る。須藤店長とわたしと3人で相談する。3個パック(99円)をばらして、急きょだが10個パック(198円)を作ってみた。わたしは、20個パック(298円)も作ってみたら、と示唆した。
ちょっと安すぎると思ったが、やってみたら、10個パックと20個パックが売れ始めた。どちらかといえば、10個パックのほうが引きが良い。だが、売場の効率は20個パックのほうだ。
POSの商品マスターに登録するのは、それほどむずかしくない。バックルームでやれば、簡単だ。こした作業は、店長に運営権限があるからできることだ。
翌月は、箱売り(40個入り、600円)も試してみた。来店客も、3日目になると再度の来店客が増えてくる。すだちの食べ方がだんだん分かってきた。大量に売っても、食べ方の提案さえあれば、大丈夫だった。ついでに、保存方法を教えた。40個の箱パックには、ジップロックつきである。
ヤオコーのパートナーさんは、実によく働く。地方に住んでいる優秀な日本女性の代表なのだ。ヤオコー(しまむらも!)は、そうした女性たちに、働き甲斐のある雇用の場を提供してきた。こうした職場環境が、埼玉地方で歴史的にどのように作られてきたのか。「しまむらとヤオコー」の第一テーマである。
別の角度からのモノの見方もある。
日本の男たちは、戦後、世界にモノを売るために品質の良い工業製品を作ってきた。女性達は、そうしている間に、日本国内向けに、小売り流通の現場で農産物とその加工品(食品と衣料品)を販売しながら、日本の消費社会を支えてきたのだ。