2年前の正月に、「おみくじ あれこれ」というコラムを書いた。今回は、その続編である。20年振りにおみくじを引くことになったわたしは、予想通りの札を引き当ててしまった。そして、、、
「(続)おみくじ、あれこれ」『北羽新報』2026年1月26日号
文・小川孔輔(法政大学名誉教授、作家)
本コラムは、「おみくじ、あれこれ」(本紙2024年1月29日号)の続編になります。
自宅から歩いて15分ほどの所に、松竹映画「男はつらいよ」(渥美清主演)の舞台で有名な柴又帝釈天があります。2年前のお正月のことです。神戸の長男家族4人が帰省して、大晦日に家族10人が集まりました。明けて元旦、帝釈天までお参りに行くことになりました。
わたしを除く9人は、参拝を終えた後で境内の札所でおみくじを引きました。20年前に佐野厄除け大師(栃木県)で「凶」の札を引いてから、わたしはおみくじは引いたことがありません。由緒ある神社仏閣では、凶の比率が高いことを知っているからです。
日経新聞の記者が浅草寺で取材したところ、「100本のうち、大吉17本、吉35本、半吉5本、小吉4本、末小吉3本、末吉6本、凶30本」というデータが明らかにされています。浅草寺(台東区)と同様に、柴又帝釈天(葛飾区)も「凶」の札が多く出ることで有名です。
さて、神戸の家族4人がおみくじを引くと、稀有なことが起こりました。4人のうち3人が、連続して「凶」を引き当てたからです。3人が連続して凶を引く確率は2.7%(0.3×0.3×0.3)です。これが2年前のことです。以下は、今年(2026年)の正月のことになります。
今回は京都の娘を加えて総勢8人で、帝釈天に参拝に出かけました。魔が差したのだと思います。昨夏から仕事で不運が続いていたわたしは、20年振りにおみくじを引くことにしました。苦しい時の神頼みでした。ところが、20年をかけて蓄積していたらしい「負のエネルギー」が災いしたようです。見事に「凶」を引き当てました。ちなみに、わたし以外の7人は2年前とは真逆で、全員が「吉」(大吉2、吉2、中吉、小吉、末吉)でした。
凶を引いて動揺したわたしは、運命をリセットしようと思い、おみくじを引き直すことにしました。ところが、なんと!神様に完全に見放されてしまったようで、次に引いた札も凶でした。「3回目はかろうじて末吉で終わりましたが、この先が思いやられます」と、友人たち20名ほどに、新年早々の惨状を伝えるメールを出しました。
2連発で「凶弾」を浴びたわたしに同情してくれたのか、凶を引いたときの処方箋を皆さんから親切に教えていただきました。以下の①と②が、代表的なアドバイスです。どちらも何となく理解できますが、③の助言は初耳で斬新でした。
① 「凶より悪い札はないわけだから、そこからあとは坂道を登るだけ」という説、
② 「この先に悪いことが起こらないよう、わざと気づかせるために、由緒ある神社仏閣では凶を多くしている」という説、
③ 「わたしが凶をたくさん引いたので、ほかの人は凶を引く可能性が低くなった。他人の不幸を防いであげたことになるから、徳を積んだことになる」という説。
最後の解釈は、農水省の外郭団体に勤めている元官僚の女性からのメールに書かれていた助言でした。言いえて妙だと思いました。「先生が身代わりになって、もしかすると凶を引くことになったかもしれない人たちに、善行を施したことになりますよ」。教訓です。凶のおみくじを引いたことを不運と考えるのではなく、仏教の教えで言う「利他の精神」を凶のお札は体現しているのだと納得したのでした。


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