【巻頭言】「母の日が変わる? 2025年は構造改革元年」『JFMAニュース』2025年5月20日号

 JFMA/MPSが音頭を取って、数年前から「母の日」を振り返るオンライン会議が開かれている。司会進行は、拝野さん(JFMA事務局)と本田さん(MPSジャパン)が担当している。今年の振り返り会(5月16日)には、全国からzoomで約60人が参加していた。生産者から卸市場、花店、資材メーカーまで参加者は幅広い。母の日の実績を報告するプレゼンターは、全部で9人。⻄尾会⻑(株式会社クラシック 代表取締役会⻑ ⻄尾義彦氏)をはじめとして、流通(輸入、卸市場)から小売店(都市、地方)まで幅広い方に発表をお願いしている。

 母の日の前週のセリ日から、場合によっては、「遅れてごめんね」と呼ばれている母の日翌日以降の販売データまで、発表者が包み隠さずにデータを公開してくれる。そんなオープンさからなのだろう。その場で提供される取引データ(当年実績と昨対比)やビジュアル(店頭・ギフトカタログの写真)などからは、リアルな現場の様子が伝わってくる。
 とても勉強になる会議なのだが、9人全員で発表する時間が1時間半と、プレゼンターの人数の割には短い。
 本当は発表の最後に、全体の傾向や内容の要約をすべきなのだが、時間の関係でまとめる時間がないまま会議が終わった。その反省もあって、巻頭言は、「母の日が変わる」というテーマにしてみた。以下は、会議に参加して発表者の話をメモにまとめたものである(わたしの視点のメモなので、コメントや引用データには偏りある)。

(1)価格と供給量の変化:2024年対比で大輪カーネーションの平均単価(約70円)に大きな差はないが、供給量が減少している(国産-8%、輸入-5%)。この流れは来年も止まらないだろう。生産コスト高もあって、母の日の輸入シェア(65%)は増えていくだろう。

(2)色の変化:ここ数年の傾向のようだが、カーネーションの色が「赤」から、「その他の色」(淡いピンクやブルー、ホワイトイエローまで)の比率が上がってきている。わたし個人も今年は、義母に淡いイエローの国産カーネーションを贈っている。

(3)世代交代:色見の変化は、若い世代の「母の日ストーリー」の常識に変化が起こっているからだろう。つまり、約70年前にスタートしたイベント=「母の日」を支えてきた戦後世代が、「赤のカーネーションを贈る日」から退出しかけているからである。

(4)鉢花よりブーケ:母の日に鉢花が売れなくなっている。それに対してブーケは、前年対比で変わらずか100%をクリアした小売店が多かった。都市部の店舗では、5000円〜1万円の高額品が売れていたという報告もあった。地方では、その逆の現象も見られた。

(5)花の役割:「日頃の感謝を込めて、子供から母親にカーネーション(花)を贈る」が常識ではなくなりかけている。会議の最後に、松島社⻑が紹介していたが、「某量販店の花のカタログギフトでは売上トップが花ではなかった。1位が米5KG、2位が米3KGだった。

(6)EC販売と配達の不調:物流コスト高でECは不調だった。小売店では配達ができないリスクが顕在化している。配達を止めてしまったと、地方の小売店から報告があった。

(7)まとめ:母の日は、花にとって特別な存在だった。しかし、若い世代では、成人式や卒業式に花を贈る機会が増えている。若い人の常識は、「母の日=花を贈る特別な日」という高齢者の感覚とは異なっている。
 彼らにとって、メディア環境や花の位置づけがちがうからだろう。2025年は、母の日の構造改革が始まった年と考えてよいだろう。

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