「脱花店、あるいは、ハイブリッド型のフラワーショップ」『JFMAニュース』(2018年10月20日号)

 花屋らしくないフラワーショップが増えている。10年ほど前から、花店の店頭でプリザーブドフラワーが売れるようになり、この頃はハーバリウムが置かれるようになった。しかし、今度の流れは、これまでのように、単純にひとつの商品カテゴリーが新しく加わったのとは意味がちがっている。一言で言えば、脱花屋の大きなうねりが花業界を変えようとしている。


伝統的な花店の進化系で、雑貨屋さんのような「ハイブリッド型の花店」が登場していると考えた方が良いだろう。代表的な「脱花店チェーン」は、世田谷区奥沢のBLOOM&STRIPESと奈良県出身の花恋人(KARENDO)。若手経営者の今井英之さんや野田将克さんは、生花主体のMD(商品政策)にこだわらない。

 10月6日オープンしたkarendoの池袋マルイ店は、フランフランの隣にある。二階のショップは、ほとんどがアパレルブランドか雑貨屋。池袋のマルイで一番売上が良いのが、100円ショップのセリアだそうだ。

 マルイのテナント構成に引っ張られたわけでもないだろうが、 karendoの池袋マルイ店の品揃えは、パーソナルギフト用のフラワーアクセサリーやソープフラワーなどが主体になっている。しかも、どちらの商品にも“KARENDO“のブランドタグが付いている。さながら、フラワーをモチーフにしたギフトショップのように見える。それなので、フランフランの隣に花店(KARENDO)があっても全く違和感がない。それどころか、共通の顧客や商品面で補完的な関係ができそうだ。

 2016年に出店した関東一号店のららぽーと富士見店では、2年目にして生花の構成比が35%とのこと。2号店の池袋マルイ店では、フラワー雑貨の割合が8割近くになると予想されている。

 花と雑貨のハイブリット店が、立地の良い都内に出店すると、いまやどこの小売店でも苦労している従業員の採用に有利に働く。例えば、 karendoの池袋マルイ店では、新店舗の採用をSNSで募集したところ、瞬く間に50人が応募してくれたとのこと。「5人の採用枠なので募集は即打ち止めになりました」(野田社長)。花屋のハイブリッド業態は、販売面でSNSとの相性の良いことは知られていたが、社員やパートの採用でも反応がとても良いらしい。

 今井さんが経営しているBLOOM&STRIPESでも、採用でかなりの良質な人材が集めることができているようだ。人が集まるかどうかは、ある意味で、会社の事業やブランドの未来が明るいと見られることの反映だと思われる。ということは、脱花屋あるいはハイブリット型の花店の未来は明るいとのサインなのかもしれない。

 野田さんに伺ったところ、埼玉県のららぽーと富士見店は、初年度から予算を達成。二年目も売り上げも伸びているとのこと。これまでマルイの新宿と北千住に出したポップアップストアも好評である。関西でもマルイの難波店は、関東と同様に事業が好調に推移しており、KARENDOとマルイとの取り組みがさらに広がりそうだ。

 ハイブリット業態の将来に期待してみたいと思う。2000年にJFMAを立ち上げた時、2020年からの10年間は、「異業種とコラボで、花店は雑貨やアパレルやコスメに溶けて行く」と予想した。二社の動きを見ていると、この予言はなんとはなしに当たりそうだ。