グラフィック科学雑誌の『ニュートン』が、2018年12月号で、「最新科学にもとづく食と健康の正しい知識」という特集を組んでいる。大学院の研究室で、ベジタリアン・ヴィーガン研究者が数人いて、彼女/彼らが研究室でニュートンの最新号を回し読みしていた。
話題になっていたので、自分でも雑誌を購入して、全編を子細に通読してみた。わたしは、知る人ぞ知る「サプリメント大魔王」である。雑誌で俎上にのぼっている約10種類のサプリメントのうち、少なくとも5種類は日常的に摂取している。
さて、特集の内容は、世の中でよく摂取されているサプリメント類について、実際の効果・効能を検証したものである。国立大学の有名教授や研究所の識者・研究員に、サプリメントの科学的な効能を論じてもらっている。予想通りというか、市販されているサプリメントのほとんどは、「科学的に効果がある」という確かな証拠が存在していないらしい。サプリメント依存症のわたしの信念は、もろくも崩れ去ってしまった。
信念として喧伝されている情報には、どの程度の根拠があるのか?何を信じたらよいのか?科学的な検証の結果(抜粋)を、簡単に要約してみる。
Q1:コラーゲンを食べると肌にハリはでるか?
A:「美容効果に対する信頼性の高い証拠はない」。
コラーゲンは胃の中でバラバラに分解されるので、そのままでは吸収されない。
Q2:摂取した乳酸菌は、胃腸でどうなる?
A:「一部は腸まで届き、免疫や便通を調整するよい効果がある」。ただし、乳酸菌は腸内に滞在する時間が三日間程度なので、毎日摂取しないと効果は薄れてしまう。わたしのような三日坊主では効果なし。
Q3:グルテンフリーは、万人向けか?
A:「大多数の人にとって、体によいという証拠はない」。セリアック病の人には、グルテンを含む食品を避けることは必要な処置。一般人にとってグルテンを摂取しないことで健康になるという証拠は存在していない。無意味な食習慣らしい。
Q4:関節の痛みにグルコサミンには効くのか?
A:「痛みの明確な軽減効果は報告されていない」。論理的には、Q1と同じで、原料(グルコサミン)を補給しても、それが関節の部品(膝関節のクッション)になるとは限らない。これ以外に、わたしが摂取しているサプリメント類で、証拠が怪しいリストを挙げると、「βカロチン」「コレステロールゼロのサラダ油」「玄米(ビタミンB類含有)」「ポリフェノール」「アントシアニン(ブルーベリー)」など。世間で言われている効能に対して、根拠が怪しい。逆に、気にしている習慣である「糖質制限」「プリン体(忌避)」は、習慣としてほとんど意味がないと書かれていた。目から鱗の説明も多々あって勉強になった。ところで、サプリメント類が実は効能が極めて怪しいというのと対比すると、花や植物の持つ「癒しの効能」は科学的にも証明されている。米国の大学研究室だけでなく、日本でも筑波の花き研究所では、地味ながら花の効用を研究しているリサーチャーは尊敬されている。ハーブなどでも「鎮静効果」があることは、確かな科学的な根拠がある。
というわけで、私のように怪しげなサプリをたくさん飲むよりは、効果効能が明確な花や植物にもっとお金を投じるべきという結論に到達した。『ニュートン』の12月号の効用である。