「“花”という商品の概念をもっと広く考える」『JFMAニュース』(2018年12月20日号)

 今度の新春セミナー(1月22日)は、「新しいフラワーショップのスタイル:ハイブリッド型フラワーショップの提案」というテーマで開催される。基調講演は、佐藤由太郎氏(日比谷花壇)と野田将克社長(花恋人)にお願いしている。講演後のシンポジウムでは、基調講演者のお二人に加えて、今井英之代表(ブルーム&ストライプス)に登壇していだだくことになっている。


ここ数年間、JFMAの新春セミナーは、「お花屋さん活性化セミナー」として位置付けられ、2014年からは、異業種(相模屋食料)や隣接する業界(ローソン)からスピーカーをお迎えしてセミナーを開いてきた。しかし、今回はその流れをいったん断ち切って、新興の花屋さんで業界を内部から変革しようとしている中堅・若手経営者に焦点を当てることにした。

 私が「ハイブリッド型花店」と呼んでいるフラワーショップの取り組みである。彼らは、従来からの「花のジャンル」に収まらない事業システムの構築に取り組んでいる。「KAREDO」(「花恋人」の新ブランド)や「BLOOM&STRIPES」は、ある意味で、「花」をモチーフにしたブランドショップである。フラワー雑貨の新業態が伝統的な花店と異なっているのは、商材としての生花にこだわらないという姿勢である。

 例えば、花恋人では、ソープフラワーやプリザーブドフラワーなど、雑貨ジャンルの売り上げが全体構成比で30%を超えている。10月に池袋丸井内にオープンした新ブランド(KAREND)の店舗では、雑貨の割合が70%近くになっている。

新春セミナーで議論したいと思う論点のひとつは、従来の花店の枠に収まらない「フラワー雑貨店」を花店の未来型と考えてよいかどうかである。

 この課題について、私の見解を簡単に述べておきたい。JFMAを創設した時(2000年)に、「JFMAの第3期(2020年~2029年)において、花産業は隣接する業界(住関連のライフスタイル業態)に溶けていくことになるだろう」と予言した。フラワーショップもその例外ではない。アパレルやコスメ、ファッションや雑貨のチェーン店の一部門になる可能性がある。

 花という商材の存在意義(ベネフィット)を、生花に限定して考えることは、今やビジネスとしてみても狭すぎると考える。アパレル業界で使用されている「花柄」のデザインも花のひとつの表現形である。アクセサリー(ペンダントやピアス)の花形(Shapeも、花が提供するモチーフ(Idea)のひとつと考えてよいだろう。モチーフとしての花のほうが、生の花より上位の概念である。だから、生花にこだわるのは、狭い了見といえないだろうか?

 花のもたらす効用(Benefit)は、自然を想起させるがゆえの「安らぎ」に求めてもよい。たとえ人工物であっても、花のデザインの美しさはどこかで自然の息吹を連想させるものである。だから、プリザーブドフラワーやハーバリウムの流行を否定的にとらえる見解に、私は反対である。むしろ、花をモチーフにしたライフスタイルの提案を、もっと上位の概念として受け入れるべきだと考える。

 もう1つのポイントは、花店が小売りだけではなく、生産段階や商品開発に乗り出しすべきではないかという論点である。商品開発(PB)や海外調達(卸加工業)という観点から見れば、フラワーショップがSPA(製造小売業)を志向しているともいえる。それは悪いことではない。アパレルやホームセンターの業界では、ごく普通のことである。なぜなら、低生産性(=低収益性)の壁は、生産と販売を統合することによって打破されてきたからである。花業界でも、若手の経営者がSPAの可能性に挑戦しているのはうれしいことである。