「こんな時だからこそ、お花屋さんで花を買おう」『JFMAニュース』(2020年3月20日号)

 めずらしいことが起こっている。ホワイトデーの前日(3月13日)、江藤拓農林水産大臣が緊急の記者会見を開いた。「新型コロナで需要減に苦しむ花農家と花屋さんのために、花を買ってください!」とメディアを通してアピールしたのだ。

 

 花産業は、農業全体に占めるウエイトがとても小さい。出荷額で見てもせいぜい一桁の下の方である。そんな花業界のために、農水省がわざわざ「花いっぱいキャンペーン」などを展開してくれることは考えらえれなかった。

 例外的な扱いを受けたのは、この時期のイベント(卒業式、入学式、歓送迎会)が花業界を直撃しているというニュースがわかりやすかったからだろう。ホテルや旅館、イベント関係、アパレルや外食も苦境に落ちっている。しかし、花の需要は日本の季節の行事と密接に関係している。その行事が次々に中止に追い込まれていることは、日本人の心に訴えるものがあったのだろう。

テレビ局もその動きに応えてくれた。朝昼のワイドショーの時間帯で、花業界を応援するための番組を放映してくれている。マスメディアと農水相の発言がどれほどの効果を上げたのかはわからないが、少なくとも世の中の人々が、3月が花業界の最大の稼ぎ時であることを知ることを改めて確認させるきっかけにはなったことはまちがいない。

 卒業式や結婚式が中止の憂き目にあったおかげで、花の価格は暴落ぎみだ。江藤農水相がメディア向けに話した記事によれば、花の価格の下落率は通常時の3~4割と報道されている。同じ農産品でも、生鮮品の野菜などの出荷は好調だ。一方で、不要不急のでない切り花や鉢物については、出荷のキャンセルが続出している。

 このところ、いつにもまして心配で、全国の花生産者や花屋さんに、「どんな状況ですか?大丈夫ですか?」と電話をかけ続けている。SNSも重要な連絡手段だ。たとえば、前年の台風で大きな被害にあった房総の花生産者の様子は、フェイスブックやインスタグラムでも確認できる。ところが、一部のネットや直販関係の仕事を中心にしている例外的な販売者を除いては、全体的にあまりいい話は聞かない。新型コロナウイルスの蔓延で、花業界は深刻な打撃を受けている。

 そんな中で、売上減に苦しんでいる花屋さんを救おうと、「お花1万本無料配布で需要喚起へ!」を提案している会社がある。「株式会社CrunchStyle」で、キャンペーンのハッシュタグには、「#こういう時こそお花を飾ろう」を採用している。これは、農水省が発信している「花いっぱいキャンペーン」のハッシュタグと同じものだ。SNSでは、こうした細かな配慮が大切だ。みんなが共通のタグを共有することで、花業界全体の運動に結び付くからだ。

 「(自社の)お花の定期便で、全国約100店舗の提携生花店の売上貢献、お花の購入のきっかけを作るため、お花約1万本(ミニブーケ3,000個分)を買取り無料配布することを決定しました」(Bloomee LIFEのリリース記事から)。  

 この企画を考えた武井亮介社長と昨日、LINE経由でメッセージを交換することがあった。

「企画全体で3000名へのプレゼントだったのですが、開始から5時間で埋まってしまったので、もう少し長く企画できるような設計にできればと反省です」(武井さん)。

 企画の良しあしについての反省はあるにせよ、ワタミ(宅配弁当の無料配布)やローソン(おにぎり無料配布)に続いて、スピード感をもって事に当たるアイデアと勇気は称賛されてしかるべきだろう。既存の生産者や花屋さんたちからも、こんな時だからこそ、社会貢献につながる果敢な提案を待ちたいものだ。