12月のアフタヌーンセミナー(13日)は、「花き業界の2022年を振り返る!」というテーマだった。いつもの役回りで、わたしはセミナーでコーディネーターを務めさせていただいた。パネラーは、ミヨシグループの三好社長と東日本板橋花きの樋口社長。JA会津よつばの菅家さんは所用で出席できなくなったため、事務局が資料を代読することになった。
取り上げたテーマをリスト化すると、①人手不足、②資材の高騰、③輸入の困難、④エネルギーコスト、⑤物流問題、⑥環境への取り組みなど。JFMAの議論はいつも予定調和で終わるわけではない。
ところが、今回だけは、司会者としてヒヤリとする場面に遭遇した。パネラーが示したデータとわたしの観察との間に齟齬が見られたからだった。そのため、司会進行に一瞬のことだが困難を感じた。議論の展開について、どうのように折り合いをつけるべきか?
以下の1~3は、樋口さんのデータと解釈を要約したものである。
1園芸植物の需要は、コロナ禍の3年目でほぼ一巡した(鉢物市場は前年割れ)。
2国内産地の動向では西南暖地が優勢(東北地方や北海道は、技術要因や継承問題で、栽培の継続が困難)。
3資材高騰で生産者は利益が上げられていない(コスト増、収益は赤字傾向)。
上記1~3について、わたしの認識はちがっていた。それぞれ次のようなものだった。
1園芸植物の2022年度の販売データ(DIY協会月報、家計調査月次)を見ると、ホームセンターの園芸部門や家計消費(総務省)は、部門シェアや消費が堅調に推移している。
2ブドウやイモ、コメの産地が北海道や東北地方に移動している。温暖化の影響は切り花や鉢物、球根栽培などにも及んでいる(切り花や鉢物について自信はなかったが)。
3生産者のヒアリングで、とくに優良な生産者は、2022年度は過去最高益を享受している。あるいは、コロナ前よりも売上・収益ともの良好である。
実は、樋口さんとわたしの観察は矛盾しているわけではない。次の要因を考慮すると、どちらの観察やデータも正しいことになる。農業分野で進行している3つの現象を考慮すると、むしろ販売実績は、以下のように環境変化に対応できているかによるものである。
(A)園芸植物だけでなく、農業生産そのものがローカライズしている。産地のブロック化や規格の変化に対応できているかどうかで売上や収益がちがってくる。
(B)従来からの単品大量生産のままの生産体系から、多品種少量生産の栽培体系にシフトできているかどうか。また、栽培する品種品目が時代の流れに沿っているかどうか。
(C)代替的な栽培方法が選択できているかどうか(例えば、省エネの工夫や品種選択、規格を注意深く選択できているか)。
生産者も産地もこの先は二極化していくことになるだろう。そのとき、(A)~(C)の取り組みに積極的であるかどうかが、やはり分岐点になりそうだ。そんなことを考えていると、花産業にはまだまだやるべきことが残されていると思った次第である。新しい分野への挑戦こそが将来の成功につながる。花業界にはまだチャンスが残されている。もろもろの現象について、わたしたちが見ている矛盾は、文字通り論理的な矛盾ではなさそうだ。