【JFMAニュース・巻頭言】「異業種の知恵に学ぶ」(2013年12月号)

 来年1月21日(火)に法政大学で開催される「JFMA新春セミナー」は、テーマを「異業種の発想に学ぶ」とした。近年、とくに「フラワーバレンタイン」などの消費者向けのキャンペーンをはじめてからは、JFMAも異業種企業とのコラボレーションが増えている。


初年度以上に、東京都内の百貨店、レストラン、映画館、書店、メディアなど、小売サービス業との提携イベントが多くなった。地方でもイベントの会場設営などで地元のメディアや商業施設とのタイアップが増えていると聞く。そこで、この際、花業界以外の人たちと交流を深めてはどうかと考えて異業種交流のセミナーを企画してみた。

 JFMAの新春セミナーで、異業種の企業に基調講演をお願いするのは、これで二度目である。スウェーデンの家具小売チェーンIKEAが8年前に日本に再上陸した翌年に、当時の「イケアジャパン(株)」の社長Lars Petersson氏に講演を依頼している。

 さて、今回のゲストスピーカーとしては、日本で一番大きな豆腐メーカーの若社長さんをお迎えすることにした。群馬県前橋市に、お豆腐の業界で日本最大の全自動化ライン工場(5工場)を展開している「相模屋食料」の鳥越淳司社長である。実は、鳥越さん自身が豆腐業界にとっては「異業種参入」の人である。もともとは雪印乳業の営業マンだった方(北関東地区担当)で、10年ほど前に会社を辞めて相模屋食料に入社している(2代目社長の娘婿)。「日経MJ」のヒット商品(2012年度)に選ばれた「ザク豆腐」などは、鳥越さんの発案から生まれた斬新な商品である。乳製品の営業を担当していたマーケティングのセンス(+趣味のガンダム・プラモデルづくり)が、豆腐業界におけるイノベーションの源泉の一つである。

 相模屋食料は、創業から62年目の若い企業である。その企業が、伝統産業で成熟している「お豆腐産業」(市場規模6000億円)で、8年間で約5倍に成長している(2012年度、売上142億円:2004年度32億円)。成長の速度はいまだに減速していない。豆腐メーカーとして、2008年にはじめて売上高100億円を突破したが、将来は1000億円を目指している。CGC系の食品スーパーでは、おそらく50%~60%の店頭シェアを握っている。「絹ごし豆腐」「木綿豆腐」「がんもどき」「焼き豆腐」「厚揚げ」など、フルラインの品ぞろえで圧倒的なコスト優位と供給力を持っているからである。鳥越社長には、そこに至るまでの戦略的な発想(常識を破る)を話していただくことになる。

 先月、日本経済新聞社(日経MJ)が主催するセミナー企画の打ち合わせで、群馬工場を見学させていただいた。日本最大の第3工場(前橋市鳥取町)では。自動車組み立て工場で使用されているのと同じ8台のロボット(ファナック製)が、自動化ラインを流れてくる豆腐をパッケージしている様子を見て実に驚いた。味と品質管理にこだわりながら、なおかつ製造方法にイノベーションを起こし、低コストで生産する技術を完成していたからである。おそらく異業種・隣接分野からの発想だからこそ、取り組めた成果ではある。しかし、相模屋食料そのものは、伝統的な製法を続けてきた豆腐屋出身の企業である。なぜ、それができたのか? 当日の話を楽しみに、会員の皆さんの来場をお待ちしたい。

 講演後には、鳥越社長の他に、青山フラワーマーケットの井上英明社長とオイシックスの高島社長、リンクフローリスト(㈱カクヤスの関連会社)の河野恵美社長(交渉中)をパネラーに迎えて、パネルディスカッション「異業種とのコラボレーション」を予定している。