【巻頭言】「花きの露地栽培と有機農業の共進化現象:(後編)資源低投入型農業の未来」 『JFMAニュース』2025年11月20号

 前編では、有機農産物の市場が日本でも緩やかに成長していることをデータで示した。有機栽培は、無農薬で化学肥料を使用しない低投入型農業である。環境負荷を考えると、花産業でも低投入型の栽培方法と自然なテイストの花(野の花や枝物)への需要が、市場の大きな部分を占めるようになると予想している。後編では、その根拠について議論してみたい。
 
 まず、露地栽培と施設栽培について、作付面積の変化を見てみよう。農水省の『花きの現状について』(2025年)によると、2000年の花農家の作付面積は、露地が27.4千haで施設は10.4千ha。2020年では、露地が17.8千haで施設が5.7千ha。作付けはどちらも減少している。20年間で見ると、露地の35%減少に対して、施設は45%減少とかなり減少幅が大きい。予想通りに、花産業でも「低投入型栽培法の優位」が進行していることがわかる。
 背景にあるのは、3つの要因である。第一に、円安などの影響もあって、鉄骨やビニルシートなど資材価格や燃料代が大幅に上昇したからである。施設栽培を中心にした経営では、エネルギーや肥料などを多投入するので、施設の維持管理が経営的に困難になる。花から野菜に転作したり、後継者が見つからず廃業してしまう花農家が増えた結果である。
 
 2番目は、消費者ニーズの変化である。小売りの店頭を見ると、10年ほど前からシャンペトル風(野の花のような)の花材やブーケが増えている。時代は、華美で人工的な大輪の花より、ナチュラルで野原に咲いているような楚々とした風情の小輪の花が好まれる。
 典型的な事例を、切枝に見ることができる。いまや切枝は、花き全体の中でキク類(39.0%)に続いて2番目に大きなカテゴリー(6.8%)に成長した。大田花き(花の生活研究所)の内藤育子氏が分析しているように、「2002年産の出荷量で、切枝はカーネーションの56%でしたが、2020年産でほぼ同量、2021年産からカーネーションを抜き、キク類には次いで第2位となりました」(『FLOWER BUSINESS NOTE 2026』(Data9①)。
 
 3番目は、「野の花産業」の勃興とそれを支える新規参入者たちの登場である。日本で「野の花」(英語では、サマーフラワー)の先駆者は、菅家博昭さん(昭和村のカスミソウ生産者)と片桐敏美さん(伊那谷のアルストロメリア生産者)である。菅家さんがしばしば雑誌や講演、個人のレポートで報告しているように、田中彰さん(ヤリファーム)などの花店出身の若者が、都会を離れて地方(安曇野)で野の花の栽培に挑戦している。
 
 枝物の栽培でも同様なことが起こっている。茨城県奥久慈農協の枝物部会(144軒)では、20年ほど前に産地づくりを始めて、花桃や奥久慈桜、染ヤナギなどを栽培している。休耕田や耕作放棄地(78ha)を活用して、枝物の出荷額は2.4億円を超えている(2024年)。
 海外でも同様なトレンドが同時多発的に起こっている。1988年に「全米草花生産者協会」(The Association of Specialty Cut Flower Growers, Inc.)が発足した。ASCFGは、ローカルの生産者の技術交流と教育の場を提供している。活動に参加している農家数は、現在3000軒を超えている。米国で始まった協会の活動は、大西洋を渡って欧州にも広がっている。
 単品で大量生産した花を、国境を越えて運ぶ時代は終わったように思う。キク・バラ・カーネーションなどを、安価に大量販売することが必ずしも求められてはいない。施設栽培と輸送コストの上昇は、地域の気候風土に適した新しい「地産地消の仕組み」を求めている。

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