「“今後10年でオーガニック・エコ農業の10倍拡大を目指す”目標を掲げてNOAFが設立される」『JFMAニュース』(2016年7月20日号)

 先週の7月16日(土曜日)、法政大学のスカイホール(ボアソナードタワー26F)で、「NOAF(オーガニック・エコ農と食のネットワーク)」の設立記念総会が開かれた。縁があって、わたしは代表幹事に就任することになった。この会は任意団体なので、JFMA風にいえば、NOAF(「農夫」の掛詞)の代表幹事は会長の役割になるだろう。事務局は、農水省生産局(農業環境対策課)と「次代の農と食を創る会」(有機エコ農業と食品産業に関わっている若手リーダーの会)が担当している。略称NOAF(Network for Organic-eco Agriculture and Food Lifestyle, Nippon)は、オーガニック・エコ農業を拡大するために集まった人々の緩やかなネットワークである。そうだとはいえ、農水省が事務局を担当することは異例である。


考えてみるとよいだろう。これは、花業界で言えば、「花の消費を拡大するために、外郭団体(たとえば、花普及センターや花の国日本協議会)ではなく、農水省本体(花き産業振興室)が事務局を務める」のと同等な位置づけである。
 そして、若手リーダーの会(次代の会)が掲げている目標が、「今後10年でオーガニック・エコ農業の10倍拡大を目指す」となっている。どこかで聞いたことがある目標設定ではないだろうか?「10年間で、花の需要を2倍にする」。
そうなのです。2005年にJFMAが掲げた目標と瓜二つのゴール設定なのである。その当時、1995年と比べて、10年間で欧州は花の市場が二倍に、米国は50%増になっていた。「だから、日本でも同じムーブメントを!」と考えて、高い目標設定にした。
 花の国日本協議会が、フラワーバレンタインに続いて「ウイークエンドフラワー」で、いま市場拡大に努めているが、2005年以来の目標はまだ達成できていない。

 実は、ここに興味深いデータがある。NOAFの若手メンバーが、「日本のオーガニック・エコ農業を10年で10倍に」と目標設定したのは、国際的な産業比較データが根拠になっている。花産業と類似したデータなので紹介する。
 日本の農地面積の中で、有機農業に供されているのは、0.25%である。対照的に、欧州の代表的な農業国では、デンマークの農地全体の中で有機が占める割合は6.27%、ドイツも6.27%、フランスが4.08%である(2014年)。
 国民一人当たりの有機農産物の消費額で、日本は1,102円(2014年)だが、デンマークが22,771円、ドイツが13,572円、フランスが10,307円となっている。要するに、栽培面積でも、一人当たりの消費額においても、日本は欧州の10分の一以下なのだ。
 そこで、若手のリーダーたちが、わかりやすく「有機10倍(しゃれている?)の成長」をゴールに設定したというわけである。実現可能かどうかは、代表幹事のわたしにはわからない。その実現と将来に向けての行動は若手グループに任せている。

 さて、有機農業(食品を含む)の場合、花業界と大きく異なる点がひとつある。それは、実行部隊の年齢である。会長の西辻一真氏(株式会社マイファーム代表取締役)や会計担当(副会長格)の小野邦彦氏(株式会社坂ノ途中 代表取締役)が30代前半だということである。その他の幹事メンバーも、年令は40歳前後である。日本の第一次産業を牽引して「農と食の新しい時代を作る」ことをヴィジョンに掲げる運動が、30代~40代の若者が担う点はこれも異色ではないかと思う。花の産業でも、同様な動きがあると感じている。わが後継者たちの今後に期待したい。