【巻頭言】「日本の森林を持続可能に:『中国木材』の挑戦」『JFMAニュース』2023年12月20日号

 このところ、日本の森林保全と木材の製材加工事業の持続可能性について、何回かコラムや原稿を発表している。森林や木材は、花業界の隣接分野である。花関係者にも、このことを知ってもらおうと思い、JFMAのニュースで記事にしてみた。森林や樹木は、農産物(花き類)の栽培や環境保全(製材と森林経営)と深い関係を持っている。

 

「日本の森林を持続可能に:『中国木材』の挑戦」(2023年12月号)

 文・JFMA会長 小川孔輔

 

 今月号の巻頭言では、「中国木材」(本社:広島県呉市)の環境保全ビジネスを紹介したいと思います。中国木材は、木質系住宅用の材木で25%のシェアを持つ国内最大の製材加工メーカーです。同社は、1980年代に外材の輸入と製材業に進出した新興企業です。近年は、森林の再生(持続可能な森林経営)にも力を入れています。
 ところで、花業界の皆さんは、農産物の自給率が38%で、花き類の自給率が27%だということはご存知だと思います。それでは、木材の自給率はどのくらいだと思いますか?
 答えは、2022年で自給率は41%です。木材の国内自給率のボトムは2002年で、19%でした。20年ほどで自給率が2倍の40%を超えたのは、地球温暖化による山火事や虫害、樹木の過剰伐採が原因です。木材の海外調達が減少に転じたからです。そして、コロナ禍の2021年に世界中を襲った「ウッドショック」の影響が決定的でした。住宅価格が値上がりして、船便の輸送コストや伐採を担当する労働者の賃金が大幅に上昇したからです。

 

 わたしは、1951年に秋田県能代市で生まれました。故郷の町は、明治時代から戦後の高度成長期にかけて秋田杉の製材で栄えた街で、「東洋一の木都」と呼ばれていました。ところが、わたしが大学生のころ(1970年~)、北米から外材(米松)が輸入されるようになりました。日本各地で国産材の製材所が閉鎖に追い込まれました。わが町も同様でした。
 一方で、本稿で紹介する「中国木材」は、1980年代に外材の輸入事業に進出しました。外材を効率よく製材加工する技術(強くて丈夫な「集成材」、たわまない「乾燥材」)を開発することで、急成長を遂げます。機を見るに敏な同社は、21世紀に入ると今度はいち早く外材の輸入から国産材の活用に舵を切ります。日本各地に国産材の製材工場を建設し、同時に国内の森林の保全(育苗、植林、育林)に取り組みはじめます。

 さらに、国内7か所の製材工場では、温室効果ガスの抑制や端材のリサイクル事業を展開します。象徴的な仕組みとしては、製造工程にバイオマス発電所を併設したことです。バイオマス発電では、杉皮や未利用材、工場から出る端材やおがくずを燃料にしています。2014年に建設した日向工場の運営は、九州一帯の森林伐採作業と一体化させています。森林の所有者とは、端材も含めて山から出るすべての材料を買い取っています。木材以外でも燃やせるものはすべて買い取るのです。一括買取りで、販売側はコスト削減ができます。

 

 高性能機械の導入など、材木を切り出すための技術革新は、日進月歩で起こっています。しかし、日本山林では自然災害に強い林道や作業道を作るのが難しい状況にあります。その結果、材木を山から切り出すコストを低減できないでいます。

 中国木材の堀川保彦社長によると、「不在地主が、山の大型化を阻害しているのです。林道の整備が不十分になり、少量ずつしか材木を搬出できないので搬出コストが高くなってしまうのです」。こうした課題解決に会社として積極的に関与することで、日本の森林の再生に大きく貢献できると堀川社長は考えているようでした。

 

*本稿は、2023年11月28日に行われた堀川保彦社長(@中国木材本社)とのインタビューをまとめたものです。フルバージョンは、拙稿「日本の森林を再生する:“中国木材”の環境保全ビジネス」『DIY会報』(2024年新春号)をご覧ください。