2021年の母の日は、連休が明けてすぐの日曜日(5月9日)になった。連休明けの母の日は、これまでの経験から売り上げが芳しくないと言われてきた。ゴールデンウイークの直後はお金と時間を使い果たして、花に対する購買意欲が低下するとの理由づけがなされてきた。理屈は正しいのだろう。
しかし、今年に関しては逆のパターンが想定されていた。新型コロナウイルスの感染拡大で、“Stay Home”が常態になるだろう。人々が家に籠るようになれば、花贈りは自粛生活の恩恵を受けるはずである。「コロナ2年目は花の売れ行きが好調に推移するだろう」との業界人の予想は見事に当たった。立地と商品カテゴリーにもよるが、量販店の花売り場や花店チェーンだけでなく、町の花屋さんも、2019年比で売上が110~120%と好調に推移した模様だった。
個人的にも、母の日当日は下町地区の量販店(イトーヨーカ堂、ビバホーム)や大手花店チェーン店(青山フラワーマーケット)、そして地元の花店を覗いてみた。直後の「JFMA理事会」(5月11日)と「MPSオンラインサロン」(5月14日)にリモートで参加して、全国各地の市場関係者や小売店のレポートを聞くことができた。わたしが店頭で観察した結果と同様な報告がなされていた。まずは安堵の胸を撫でおろしたものだった。
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コロナ2年目の花販売が順調に伸びた要因を分析してみたい。少し前から言われてきたことは、①ホームユースの定着と②新しいサービスの登場である。2つ会議(JFMA理事会、MPSサロン)での意見を要約すると、コロナ禍で花や植物に対する生活者の態度が変わったという見立てである。在宅の時間を彩る物として花が再評価され、植物を育てる活動である園芸が見直されたというわけである。
長く続く在宅勤務の中で、生活に潤いをもたらす花が「必需品」に復帰したのである。これまでは花に目もくれなかった若者層や、近年は花離れが激しかった20代・30代の女性が花屋に来店している。花のサブスクリプションのサービスをきっかけに、花に目覚めるグループが現れている。サブスクの顧客の8割は、これまで一度も花を購入したことがなかった新規顧客である。
今年の母の日で品薄になった品目に、コロナ2年目の母の日の特徴を見ることができる。一言でいえば、母の日の伝統回帰である。定番の赤のカーネーションが高値で売れていた。昨年まで販売に苦戦していたカーネーションの鉢物が品薄で高値になっていた。
伝統回帰の背後にあるのは、「母の日の意味」を皆がしばし立ち止まって考えるようになったことがあげられる。その象徴的なアイテムとして、赤いカーネーションがあった。ときには「花より団子」を忘れて、人々の気持ちが花贈りに向かったのではなかろうか。
困難な時に頼れるものは母親の愛情であり、家族との貴重な時間が苦しみを軽減してくれる。人類の活動に長らく作用してきた「遠心力」(遠くに旅するとか新しい趣味を始めるなど)が一休みしている。コロナ禍で一緒に暮らしている家庭や地元の暮らしに対する求心力が働いたのだろう。今年の母の日で売れた品目の多くが、求心力や伝統行事と関連が深いように思える。