2013年は、16年ぶりで百貨店の年間売上高が上昇に転じた。対前年度比でほんの数%であるが、日本経済の反転を象徴している出来事である。1997年は、花の消費もピークだった年である。『東洋経済オンラン(1月17日)』から記事を引用してみる。
「日本百貨店協会が17日発表した2013年の全国百貨店売上高は、店舗数調整前の全店ベースで前年比1.2%増となり、16年ぶりに前年比プラスとなった。店舗数調整後の既存店ベースでも同1.6%となり、2年連続で前年を上回った。首都圏の店舗で実施された増床・改装効果に加え、景気回復がフォローの風となった。」
2013年の全店ベースの売上高は6兆2171億円である。1997年のピーク時に、全国の百貨店売上高は約8兆円だった。それが、10年間で約2兆円を失い、その後は百貨店全体の市場規模は6兆円付近で低迷していた。ところが、ここ数年で店舗数は減少していたのに(2013年は7店舗減少)、全店ベースでは前年比でプラスとなった。百貨店協会の説明によると、「プラスとなった背景については、都心大型店の増床・改装効果とアベノミクスによる景気回復も追い風となった」と分析している。
花業界にとっても、1997年は特別な年である。たまたま偶然なのかもしれないが、百貨店の売上の頂上と花の消費の頂点が重なっている(総務庁『家計調査年報』)。その後、10年間にわたって花の消費は減少した。世帯当たりの切り花消費金額が1万円を切ってから、ここ数年は低迷が続いている。法人需要やギフト中心でもともと商品単価が高かった鉢物は、さらにもっと状況が厳しかった。
それでは、花業界でも百貨店と同様に、消費需要の反転は期待できるのだろうか?答えは、「イエス」である。ただし、ひとつだけ反転のための条件がある。その条件とは、「花業界あげて消費を回復させる努力ができるかどうか」である。『東洋経済オンラン』の記事に注目していただきたい。百貨店の販売が上向いたのは、たしかにアベノミクスの経済効果の恩恵という面がないわけではない。しかし、百貨店業界人は、他人任せ・景気任せの偶然を頼りに経営をしたわけではない。かなりの努力の結果、業績が回復に転じたのである。
よく見てみると、数年前から、都心の大型店では増床と改装がなされてきた。たとえば、関東地区で言えば、増床のあと新館が完成した銀座の三越、いま改装中の松坂屋などである。関西地区では、関東の百貨店が積極的に出店攻勢をかけている。地元の有力百貨店にしても、改装と増床を繰りかえしている。業界内では相も変わらずはげしい競争が続いているのである。個別には戦争をしながら、業界全体としては立地変動や顧客対応に努力している。その結果が、2013年対前年度で16年ぶりに売り上げがプラスになったのである。
冒頭に投げかけに質問に対して、すでに答えは出ている。花業界にとって経済環境の変化は、明らかに百貨店業界と同様にプラスである。しかも、これから来る消費税による値上げは、基本的な消費マインドを減じることはないだろう。これも15年ぶりのファミレスの復活が参考になる。ディスカウントの時代は終わりかけている。「すき家」や「マクドナルド」の不調とは対照的に、魅力的な高価格メニューを提供しているが「ロイヤルホスト」や「デニーズ」が人気なのである。花業界でも、同じ方向が見えてきている。品質のよい魅力的なプレゼンテーションの店舗が業績を回復しているのである。