【JFMAニュース・巻頭言】「ホワイトデーは倍返しで」(2014年2月号)

 神様は意地悪だ。今年のバレンタインの日を、「ホワイト(雪の)フラワーバレンタイン」にしてくれた。


ワーキングチームの努力で、前日の2月13日までは、首都圏の商業施設や映画館、レストランなどとのコラボレーションが大盛況だった。わが学生たちも応援に駆り出されて、良く動いてくれていた。名古屋、札幌、山形、九州などのJFMA地方会員や友人たちからは、例年になく「フラワーバレンタイン」の行事が盛り上がっている様子が伝わってきた。ローカルメディアの注目を浴びているとの連絡が、わたしのところには、いつもの倍くらい入ってきていた。2010年に企画をはじめてから4年で。都会中心のフラワーバレンタインが地方にも波及してきたぞ。手ごたえは十分だった。

 オーストラリアから帰国した卒業生からは、「フラワーバレンタインの行事で昨年お世話になった小川典子さんが、ラジオ出演しているのを聞いてうれしくなりました。先生にメールします!(ハートマーク)」など。もともと根が単純なわたしは、「この盛り上がりだから、今年のバレンタインは花で大ブレークよね」と信じて疑わなかった。

 とどめは、2月11日。NHKが全国放送で、イオン幕張の店舗で実施された「フラワーバレンタイン」のイベントを実況中継してくれたことだ。「これで、いただきだ!認知度も全国的に上がったよな」。あとは、2月14日のバレンタイン当日に、花屋の店頭に何人の男性が並ぶか。その様子を見るために、個人的にも複数の花屋さんに、約30束の花束のオーダーを入れておいた。街めぐりをする準備は、すっかり整っていた。
 しかし、それは午前中までのことだった。午前10時を過ぎたあたりから、首都圏は雪になった。そして、都心でもずんずんと重たい雪が降り始めた。夕方には、歩道を歩けないくらいの高さになった。場所によっては、積雪20~30センチ。これでは花を買いに来るお客は激減だろう。

 ターミナル駅で花束を販売していたJFMA会員さんによると、「夕方、駅で列車遅れのアナウンスがあるたびに、足早に店の前を通り過ぎていくお客が。潮が引くようにといなくなってしまった。」
 結局、2月14日の売り上げは、前年比で35%減。無残な数字に見えるが、こんな悪条件の中でも、良いニュースがいくつかあった。それを紹介したい。同じく会員さんからのコメントで、「前年までなかったことで、バレンタインの前に花束の予約が入るようになった」。「提携関係にあるホテルとのコラボで、「チョコ+花束」のネット予約販売(店舗でピックアップ)が売れた」という。花店を経営している別の会員さんによると、「当日は雪でまったくだめでしたが、前日の売り上げは、昨年対比で2.5倍でしたよ。」

 バレンタインの日に、事前に予約が入ったり、店舗中心の店でも電話で受注がはじまったのである。つまりは「立派な物日」として定着しかけている証拠である。そういえば、わたしも昨年からは、店頭で買うことをしていない。数日前に予約をしておいて、当日に店頭でピックアップするか、花束を研究室に届けてもらっている。バレンタインが変わってきているのだ。
 だから、天候に恵まれなかった今年の結果に、花業界の皆さんはそれほど悲観することはない。恐るべき次のイベントが待っているのだ。それは、一か月後のホワイトデーである。雪が降ったバレンタインの翌日に、何人かの女性たちから詰問にあった。「先生、わたしのところにはお花が届きませんでしたね」。そして、堅い約束をさせられてしまった。雪のために花を届けられなかった女性たちに、3月14日には、いつもの倍の花束を届けることになったのである。これを、「ホワイトデーの倍返し」と呼ぶことにしよう。わたしが意図したわけではないが、結果として、花業界も倍返しの恩恵を受けるわけである。