「花の定期便(Bloomee Life):花屋ではないからできたサービス?」『JFMAニュース』(2019年4月20日号)

 個人ブログで、花の定期便「Bloomee Life」を紹介させていただいた(3月25日)。いま様々な業種で雨後の筍のように、つぎからつぎに登場しているサブスクリプションモデル(定期購入モデル)の一種である。有名な“サブスク”のサービスとしては、「エアークローゼット」(天沼聡社長)が運営している衣料品の定期お届け便がある。

 

 フラワー定期便を運営しているのは、「㈱CruchStyle」というITベンチャー企業で、インパックの守重知量会長に、CEOの武井亮太さんを紹介していただいた。32歳の若者が1億円を調達して始めた会社で、2年半で会員数が1万5千人を突破していた。

 サービスコンセプトは、「お花のある暮らしで、毎日にちょっとした感動を」。毎週あるいは隔週で、自宅のポストに封筒入りのお花を届けてくれるサービスである。サービスの体験をしている顧客層の実像を知って驚かされた。WEB(PC、スマホ)から花の定期宅配サービスに申しこむ人の8割が、初めてお花を購入する若い女性たちである。花業界として画期的な成果は、この層がいまや最も花を購入しなくなったセグメントだからである。

 定期購入に申し込むとき、花のボリュームと価格のちがいで、3つのプランから選ぶことになる。いずれも、宅配に送料250円が別途にかかる。①レギュラープラン(800円、4本以上)、②プレミアムプラン(1200円、5本以上)、③体験プラン(500円、3本以上)。申しんでくる人数の割合は、①30%、②10%、③60%である。

 サービスの基本システムは、定期購入(サブスクリプション)を申し込んだ家庭のポストに、花屋さん(単独店)からお花が届くことである。それも、少し大きめの封筒(縦35センチ×横18センチ)で投函されるが、消費者に対して花屋さんをランダムに割り付けるところがユニークなところである。

「Bloomee Life」の存在をある花屋さんに知らせたところ、最初の反応は、「花屋さんでないからできたビジネスですよね」だった。保水しているからとはいえ、3~5本の花をむき出しの封筒に入れて郵便ポストに投函するリスクは、ふつうの花屋さんにはできない。花屋が日々経験しているクレームの怖さがわからないからできたのだろう。「常識にとらわれなかったから考案できたビジネスモデル」というコメントだった。

 現在のところ、花の供給元としては、関東圏で14軒の花屋がBloomee Lifeの「花のお届けシステム」に加盟している(全国では80軒、2019年3月末現在)。ポストに花を配達してくれる花屋が、ブロックごとに毎回異なるのがこのサービスの特徴である。花屋を顧客にランダムに割付けする狙いは、以下の3つである。

 (1)仕入れのバラエティを高める(花屋が同じだと消費者には飽きが生まれる)

 (2)消費者に驚きを提供するため(花の好みがちがうので)

 (3)花屋を評価するシステムが自然にできる(消費者の好みも探索できる)。

 武井社長に問うてみたら、最初の仮説(1)は外れで、(2)と(3)は正しかった(わたしは(1)も機能していると思ってはいるが)。

 集客方法は、ネット広告ではなく、インスタグラムなどを使った口コミを通してである。「アンバサダー」と呼ばれるボランティアの女性たちが、新規顧客を獲得する役割を担っている。獲得コストは、思った以上に低いことが成功要因だろう。獲得コストと生涯価値の比率は約3倍である。

 月間の新規獲得率は約10%で、離脱率が5%弱。結果的に、顧客の純増は約5%。単純計算で年60%の成長率。女性客が9割で、年齢割合は、20代12%、30代~40代70%、50代18%。花を買わない若い女性の比率が高いことが、業界にとっては福音である。