「花の国日本協議会」がIFEX開催の前日(10月13日)、50歳以下の若手業界人を幕張のホテルマンハッタンに集めて、「フラワーサミット2015」を開催した。井上英明会長の基調講演とセミナー(福島県昭和村の生産者・菅家博昭JFMA理事がパネラー)、8つのグループに分かれての熱心な課題討議が終わったあとで、夕方からは100人規模のメンバーによる懇親会が執り行われた。以下は、その懇親会でシニアメンバーとして指名されたわたしが、花業界の皆さんの前で話したスピーチの内容である。短い時間ではあったが、生産者から小売りまで、前途有為な若者が結集していた。そして、懇親会では、たいへん有意義な出会いを体験することができた。
わたしが業界の若い人たちに伝えたかったのは、日本の花産業の優位性についてである。輸入の切り花が増加して国内生産は沈滞している。花の生産から撤退したり、キャベツやメロンなどの野菜・果物に転換する花農家も少なくない。一時よりは落ち着いたが、燃料費や諸資材の高騰も花農家の経営を圧迫している。また、花小売店では、相変わらず倒産や廃業が続いている。だからといって、量販店での花販売が飛躍的に伸びているわけでもない。
将来に向かって希望もてそうな気配もある。取り組んでから5年が経過したフラワーバレンタインのキャンペーン効果で、20代から30代の男性が日常的に花を購入するようになった。わたしたちが毎年実施している調査データにもそれが表れている。
これはとてもうれしいことなのだが、それとは逆に、とくに若い女性たちの花の消費金額がこのところ劇的に低下している。50代のシニア層が、若い女性たちの花の消費減を補うほどには消費を増やしていない。「仏花の神話」(年齢を経ると墓参りなどで信仰心が復活して花を購入するようになる)にも陰りが見える。
さて、花産業への悲観論と将来への不安で覆われそうな逆境下にあるはずだが、わたしは会場でのあいさつの中で、「日本の花産業の未来に悲観してはいない!」と堂々と宣言した。その根拠は、撤退したり倒産したりした農家や花小売店はいるが、種苗業者から個人の花生産者や花き生産組合、切り花輸入業者、100を超す荷受会社、仲卸、小売店まで、花流通の各段階に優秀なプレイヤーたちがいまだ「フルセット」で存在している。すくなくともトップの数社は、それほど疲弊しているわでもなく、機能面でも社会的な役割を十分に果たしている。国際的に見ても、十分に戦える立場にいる。
そして、わたしが強調したかったのは、JFMAのメンバーに典型的にみえるように、そうした強い個人や団体が横につながって協力関係にあることである。世界中を見渡したときに、種苗、生産、市場、加工、小売り(フラワーデザイナー)まで、国内にフルセットでプレイヤーが残っているのは、日本とオランダくらいのものである。そのオランダも、生産は逐次海外に移転している。かつて隆盛を極めた米国西海岸の切り花生産者は、ランや球根切り花の生産を残すのみとなっている。
予言してもよい。TPPに代表的に見られるように、国際貿易は脆弱な生産者を駆逐する可能性がある。しかし、国内に花産業のすべての部門が残ってさえいれば、物流費の壁や技術連携によって、外圧を吹き飛ばすことができる。すなわち、花産業にも「産業集積のメリット」はまちがいなく存在するのである。そのためにも、日本の花業界人は、ひとつの脱落部門を出すことなく力強く連帯すべきである。