JFMA新春セミナー、大盛況のうちに幕を閉じる: 「ローソンがセブンを超える条件」(小川メモ)

 スカイホールを聴衆が埋め尽くした。事前予約が160人。ほぼ満席である。花業界の関係者が約100人、大学院と一般・メディア関係者が約50人。セミナーは、ローソン玉塚社長の基調講演が70分、パネル討議が60分。熱い講演と討議が終わったのが16時5分前。早めの散会は運営上の理由からである。



 この会は、賀詞交歓会を兼ねている。25Fスタッフクラブで開かれた懇親会にも、聴衆の半分近くが参加してくださった。とにかく、新春セミナーとしては、JFMA始まって以来の盛況だった。市ヶ谷の素材屋になだれ込んだ二次会にも、30人ほどが足を運んでいただけた。会員のみなさんのサービスにはなったようだ。

 さて、セミナーの席で、配らなかったわたしのパワポのシートを一枚、ここに貼り付けておきたい。玉塚さんの基調講演を聞いていただくために、セミナー直前に作成したスライドである。最初の挨拶の15分間で、セミナー開催趣旨を述べさせていただいたときに使用したテキストである。
 「ローソンがセブンを超える日」という刺激的なテーマをリクエストしたが、わたしの事前予想は、「玉塚社長がセブン-イレブン(打倒戦略)に言及することは100%ないだろう」だった。したがって、講演の内容から、その条件を斟酌していいだくしかない。聴衆のみなさんには、ある種のガイド【案内】が必要だと思った。それが以下のスライドである。

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 「ローソンのセブン超え」の条件(3つの条件)

 (1)ユニークなストアコンセプト
   「近くて便利」→「食の安全と健康」を訴求
 (2)3つの「飛び道具」の使い方
   ①マルチブランド展開:ナチュラルローソン
   ②分散型農業FC事業:ローソンファーム
   ③高級食品SMの買収:成城石井
 (3)若い経営トップとモチベーションの高い社員

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 詳しく説明するまでもないと思う。セブン-イレブンとローソンのちがいは、企業としての成り立ちにある。歴史とマジョリティを握っている資本が違っている。創業者流通グループ(セブン)対商社(ローソン)。そして、目指している経営の方向が違っている。
 日本にコンビニが根付き始めて約40年。コンビニの基本コンセプトは、そろそろ塗り替えられる時期に入っている。その壁を乗り越えられる可能性は、ローソンのほうに分があるように思う。
 第一の理由は、(1)ストアコンセプトのユニークネスに求めることができると考える。

 二番目に、ローソンは、セブンが持っていない(2)3つの飛び道具(ブランド)を抱えている。部品となっているブランドは、ナチュラルローソン、ローソンファーム、そして成城石井である。
 セブン-イレブンは、いまや流通コングロマリットではあるが、所有しているブランドは、階層クラス的に同質ではない。消費者からみると、ブランドイメージに統一感がない。オムニチャネル展開をするにも、西武百貨店から赤ちゃん本舗にいたるまで、全体としての業態ラインの統一感のなさが弱点になっている。

 最後に、これは個人的な感想でもあるのだが、経営者の若さ(トップの年齢差が20歳以上)が組織の活性度に差を与えているように感じる。セブン-イレブンの鈴木会長は、どんなに頑張ってもあと1、2年だろう。玉塚社長は50代半ばである。業績が急に悪くならない限り、20年は社長を続けられる。
 わたしは、この一年間、ローソンの社員だけでなく、FCオーナーやローソンファームの若社長たちと話をさせていただいた。彼らは、ビジネスに対して実に前向きである。未来に対して可能性を感じて仕事をしている。
 これは、玉塚社長をはじめとして、チームが全員一丸となって経営に取り組んでいるからだろうと感じる。社員のモチベーションが非常に高い組織に育っている。
 玉塚社長の講演テーマは、「全員経営」と「実行力」だった。

 <付録>
 ローソンのセブン超えに関して、おもしろい計算を、以下に示しておく。
 玉塚社長の基調講演が終わりかけたとき、JFMA顧問の遠藤さん(元ダイヤモンドフリードマン社編集長)が手を挙げて質問をした。
 「セブン-イレブンの日販に、ローソンはいつの日にか追いつくことができると思いますか?」(遠藤次男氏から)
 玉塚さんは、明確には答えなかったが、「1000日計画を立てて、地道に努力をしています」がその質問に対する答えだった。日々の積み重ねが、セブンに追いつくために大切だと言いたかったのだろう。

 そこで、わたしは、さっそく、ローソンの社員とFCオーナーたちが、「どれくらいの努力」をしなければならないかを計算してみた。単純化のために、ローソンの日販(店舗当たり一日の売上)を55万円、セブンのそれを65万円としてみる(平均客数は、ローソン860人、セブン1000人)。いま両社には、日商で10万円の開きがいまある。この差を約3年(1000日、約150週)をかけて追いつくための計算は簡単である。
 一日100円、一週間で700円(セブンの客単価)、売上を増やしていけばよいのだ。つまり、一店舗当たり一週間で1人ずつ、ローソンの固定客を増やしていくことが条件になる。そのためには、これまでのようにセブンから逃げて、立地的に離れて出店してだめなのだ。小判サメのようにセブンに密着することである。セブンから直接的に客を奪う戦略に出なければならない。

 上で計算したように、週に1人ずつ(700円)セブンから客を奪うのである。そうすることで、3年でセブンを抜くことが可能になる。
 3つの飛び道具は、準備されている。「1000日戦争」の数値的な根拠を示したことになる。さて、