6月18日のJFMAのセミナーでは、辻中俊樹さんに基調講演をお願いした。辻中さんは、ユニークな手法で流行を捕まえる「トレンドウォッチャー」として高名な方である。わたしからのリクエストで、「平成を振り返り、 令和の消費トレンドは?」というテーマで60分ほどお話をいただいた。休憩の後は、大田花きの内藤育子さんに、「花のトレンドはなぜ巡ってくるのか」という講演を頂き後半は、辻中さんと菅家博昭さん(会津よつば)を交えてパネルディスカッション(「平成を振り返る!令和の時代に向けて」)を行った。
セミナー後の懇親会で会員のみなさんと話し込んだらしいた辻中さんから、パネルとJFMAの活動について感想のメールをいただいた。本来ならば、会長のわたしからお礼のメールを出すべきところ、先方から先にいただてしまった。
「小川先生。一昨日はセミナーで大変お世話になりました。お役にたてましたでしょうか。私の方はいろいろなインプットがあり、逆に満足感の高い時間になり、逆に感謝しております。内藤さんのお花のトレンドの話は、特にシャンペトルスタイルと言うキーワードをもらって、お花のカテゴリーでも私の考えている価値のトレンドの方向が現れていることがわかりました。(中略) 少しお花のことも考えてみています。私のやっていることとも関連しそうですし、そんなチャンスがあればまたご相談させてください。 辻中」
内藤さんの講演の中で登場した“シャンペトルスタイル”とは、「野に咲く花を摘んで、そのまま束ねたようなナチュラルな花束のこと(https://parismag.jp/life/10060)。フランスやイギリスの視察ツアーで、5~6年ほど前から目立つようになった花束のスタイルである。日本でも2~3年ほど前から、この形式のブーケが目につくようになった。花束を構成する花材が草花類やグリーンであることから、生産者の菅家さんがしばしば述べているように、小売店からのリクエストが多品種少量の「野に咲いているようなテイストの花材」に対するニーズが増えてきている実際にいわゆる、たおやかで楚々とした草花と葉物類である。
このトレンドは、辻中さんが講演の中で使っていた「シニアが撮影した写真」に写りこんでいる道端に生えている草花や樹木の風景そのものである。田園風(シャンペトルスタイ)ル)の隆盛は、わたしたち、とくにシニア世代の気持ちが自然や森に回帰しようとする流れを示しているのかもしれない。
内藤さんのプレゼン資料にあったように、日本の小売店(卸市場)は、海外に比べてこのスタイルの花を作りやすいのだと思う。幸運なことに、曲がりなりにも日本国内には生産者が残っている。チェーン小売店が完全に市場を席巻してしまった欧州や米国だと、草花類の大量供給はそれほど簡単ではないだろう。実際に、わたしたちが欧州ツアーで見たのは、スーパーの店頭ではなく独立のフラワーショップだった。
そんなわけで、わたしから辻中さんへ送ったメールの返信は、つぎのように終わっている。
「辻中さん。火曜日はありがとうございました。時間が経つのが、とても早く感じられるようになっています。 (中略) プロの観察者としての花業界を見ていただくと、シニアが植物に向けるトレンドを体現いるのがお分かりいただけたと思います。(この業界は)トレンドの観察対象としておもしろいと思います。すこし、この業界にコミットしてください! そして、知恵とネットワークを貸してください。ありがとうございました。」