「フラワービジネス講座 中級(第6回)」でトークセッションを行った。パネラーは宍戸純さん(大田花き)、菅家博昭さん(JA会津よつば)それに司会役として私が加わった。トークセッションのテーマは「花の消費」。3人とも得意分野の話で、核心をついた面白い議論が展開された。
最初に口火を切ったのは宍戸さんだった。宍戸さんは少量生産の切花を見出し、産地形成のうねりを作って流行に乗せる「トレンド・セッター」である。
昔からあった品目で人気がいまいちだった球根切り花のダリアやラナンキュラスを発掘してきた。だから、花の流行には彼なりの明確な主張を持っている。開口一番の問題提起は、「今、花のイベントが縮小傾向にある」だった。
とりわけ、東京ドームで開催されてきた『らん展』の入場者がどんどん減少しているそうだ。宍戸さんが言うには、「ランの愛好者は団塊世代が中心で高齢化が進んでいる」。若者中心の需要ではないので、SNSなどで情報が外に出ていかない。更に言えば、花屋さん自身、ランの原種がどこからきているのかや、手入れの仕方などもよくわかっていない。
私の記憶では、らん展は、資生堂創業家の福原義春さんや皇室などが、メセナ活動(即効的な販売促進・広告宣伝効果を求めるのではなく、社会貢献の一環として行う芸術文化支援)としてやってきた性格が強かった。その観点からいえば、西武ドームで開催されているバラ展の方は、入場者はやや減少傾向にあるが、団塊ジュニアなどの親子連れが来ていて参加者をまだ捉えている。
宍戸さんの話を聞いて、ラン展とバラ展の低迷にショックを受けた。しかし、私の観察は、「若い人でも植物に対しては興味をもっている」である。
事実、若い人に人気がある「GreenSnap」という植物愛好家の交流サイトは、現在40万人の登録があり、昔人気があったサボテンなどの多肉植物や、希少な品種などが次々とアップされている。多肉植物は、種類や形状が多様で、「インスタ映え」する候補アイテムである。交流サイトでの人気はバラやランにはない。なぜなら、どこでもたくさん見かけるからである。若者に人気があるのは、むしろ「希少性がある植物」の方である。
ここまで来て3人の結論は、次のようになった。①どこでも手に入る植物は人気が衰えている。②世代が変わって、「持ちがよい花」が人気になりつつある。③枝モノなどを暮らしに取り込もうとする新たな傾向が見える(菅家さんのコメント)。
菅家さんの発言を解釈すると、「植物に対するニーズとして、今までにない要求が生まれかけている」である。菅家さん風に言えば、「現代人が、枝モノを通して森とのつながりを求めている」ということになる。だとすると、神棚に榊を上げる行為は、若者も無意識に感じていることではないのか。
旬を大切にする気持ちは、ある意味で「森を家の中に取り込む=神様を家に迎え入れる」行為につながっていく。その議論を聞いていた参加者から、次のような言葉が発せられた。「ペンペン草、青フラさんから買います。すると、私の部屋が野原になります」。それに対して、「自然を取り込むとカッコいいね。」と宍戸さんが発言を引き取った。
潜在的なトレンドとして、日本的な美意識で花を選ぶ傾向が出てきている。私は感じている。これまで売れてきた花が、実はそうした本源的で隠れたニーズに対してミスマッチだったのではないだろうか。