7月19日に、『「値付け」の思考法』(日本実業出版社)を出版することになった。宣伝広告や販促活動など種々のマーケティング手段があるが、価格設定が最終利益の95%を決めてしまうことは、実務に長けた経営者ならばよく知っていることである。
その一方で、値段の決め方については、経営者の皆さんが日々頭を痛めている経営課題のひとつでもある。出版の直前でもあり、花の価格付けについて、あまり実践されていない方法をいくつか提案してみたい。
①抱き合わせ販売(補完製品の価格づけ)
パソコンとプリンターのように、本体と補完製品を買い揃える必要があるときの値決めの仕方は、「キャプティブ・プライシング」と呼ばれている。プリンターの場合は、消耗部品のトナーやインクジェットがないと印字ができない。花の場合は、花瓶(本体)と切り花(消耗品)の関係がそれにあたる。プリンターやゲーム機の値付けと同様のロジックで、花瓶の値段を決めている花店はあまり聞いたことがない。論路的に考えると、実は花瓶は原価で売っても損はないことになる。100円ショップに花瓶のマーケットを明け渡す必要はない。フラワーベースに登録番号を付与し、消耗品(切り花)にポイント還元をするよう、スマホアプリでデータ管理することもありうるのではないだろうか?
②分離価格
抱き合わせ販売とは逆で、通常は一体化されている本体と補完製品を分離して価格付けをすることを「分離価格」という。花業界では、包装用のリボンや包装紙をオマケするのではなく、別料金にして技術料として徴収する店が存在する。本体(切り花)と部品(包装紙)、さらにはサービス(技術料)を分離してチャージするわけである。10月になると消費税が10%に上がる。従来とは異なり、多くの店舗では内税を外税にして、商品本体と税金を別表示する会社がほとんどになると言われている。花業界でも、おそらくは分離価格に移行する可能性が高いように思う。皮肉なことに、10%という消費税率は計算がしやすいのである。
③数量割引
数量割引は、大量購入者に対する割引である。バンドル販売などという形で、花業界でも実施にされている。一束298円の花束を2束まとめて購入すると500円、まとめて3束だと700円などである。それを即時型ではなく、延期型にしたのが「ポイント還元」である。近年では、紙ベース(カード)をやめて、スマホアプリにポイント情報を記憶させる花店も登場している。「もう一束買うと追加は半額」なども、数量割引のバリエーションである。
④差別価格
ターゲットとする顧客を絞って、割引価格で優遇する方法。映画館の「レディースデー」(毎週水曜日)が有名である(女性に限って入場料を1000円、通常1800円)。また、「シニア割引」(夫婦どちらかが50歳以上ならば1000円)も存在している。花業界で考えると、それとは逆に、「子供割」や「男性割」があってもよいのではないだろうか?
⑤付加価値型販売
花業界であまり実践されていないのが、「延期・付加価値型」の値引きである。①や②とからめてポイントをためると、リボンや包装紙を無料で選べるとか、自分の好きな花をパートナーに届けてもらえるとか。他業界でやられている販促プランをもっと積極的に試みてもよいのではないでしょうか?