ポイント還元の実験店舗視察#2: 仮説の検証、解釈と提案

 ローソン愛媛にて2日間、7月24日と25日、松山市内で実験中の合計8店舗を巡回視察した。初日6店舗、2日目2店舗。ついでに、松山市内のファミリーマートとセブンイレブンの店舗も視察した。ファミマはローソンと同じくらいの店舗数だが、後発のセブンは四国ではまだ店数が少ない。

 
 以下のレポートは、昨日、松山空港から羽田空港までのANA92便の中でメモしたものです。メモを精査していないので、暫定的な結論になっている。
 実験の対象カテゴリーは、弁当とおにぎりの二つである。実験は8月31日までになっているが、ほとんどのオーナーは、「このまま続けで欲しい」と話されていた。”新しくて良きこと”に取り組むことに誇りを持っていた。実験開始から4週間では、まだ満足のいく結果は出ていないが、取り組みの革新性と正当性が評価されていた。
 さて、今回の店舗巡回で確かめたいと思った仮説が4つあった。昨日のブログに書き込んだ通りである。それぞれについて仮説を評価してみたい。ただし、十分なデータ量があるわけではないので、主にインタビューと観察結果から定性的に考察してみたい。
  
 
 <視察前の小川仮説>(→の後ろが考察)
1.販売量とAC効果の因果関係
 陳列量(販売数量)が大きい店舗やカテゴリーでは、アナザーチョイス(以下、ACと略記)の効果が出やすい。これは、商品の露出効果を想定している。
 →  そもそも日販が大きな店舗は陳列量が多いだけでなく、廃棄も多い傾向が見られた。廃棄率が高いので、ポイント還元施策の効果が出やすい。ただし、認知率と理解度が上がらないと、本当の意味でACの効果が上がらない。
  
2.カード利用率との相関
 カード利用率が高い店舗で、ACの効果が出やすい。これは、当たり前のように思うが、データ的にはどうだろうか?
 →  カード利用率と来店客中のヘビーリピーター率とは相関が高そうである。つまり、ACの理解度が上がれば、ロイヤル顧客はAC施策に反応する可能性はある。ポイントが貯まる傾向にあるから。
 
3.陳列方法の変更効果
 先入れ先出し(早い便の商品を前に置く)の陳列の方が、ACの効果が出やすい。しかし、データを見る限りは必ずしもそうはなっていない。それはなぜか?
 →  ACの認知度と理解度が低いことが確認できた。10〜20%程度の理解度を前提にすると、グループ別に2便と3便を分けて陳列すると、かえって消費期限が迫っている方の山を顧客は避けてしまうことになる。つまり来店客は、先入れ入れ先出の時と同じく、後ろにあった商品を難なく取れてしまうので、消費期限が迫った2便を選ばなくなる。認知度が上がらない場合はこれは致し方がない。
4.キャンペーンとの相乗効果
 ACの告知を熱心にしている店舗では、キャンペーンの効果が出る。その場合の告知方法はどれが有効か?
 →  これは概ね正しかった。カウンターでチラシを使ってACの説明している店舗では、とくに、おにぎりで廃棄数が減っていた。やはり、店舗内でもACの認知度と理解度を高める必要がある。
 
 以上は、仮説検証の結果であった。
 つぎに、店舗観察とオーナーのインタビューから、効果改善のための示唆を述べてみたい。
1.仕組みのわかりにくさと理解度の低さの解決
 認知度の低さもさることながら、AC施策が来店客にあまり理解されていない。初期のTVコマーシャルはローソンの取り組みを始めることにはブラスだが、わかりにくい制度を理解させるためには、活字媒体、つまりチラシや新聞記事、店頭でのフライヤーなどの方が効果的のように思う。プロモーション予算の使い方を考え直した方が良いだろう。
   
2.視察をして良かったこと=ACの公共性
 どのオーナーも、ACの仕組み、とくに寄付行為に対する支持が非常に高かった。フードロス削減に対する公的な役割をローソンが担うことに対して、大いに誇りを持って語っていた。とくに、女性のオーナーと若手従業員からその声を聞いた。
 したがって、全て個人にポイント還元したい誘惑は断ち切るべきだと思う。つまり単なるセブンとのポイント合戦に堕して、ローソンのあるべき理念が失われる。社会貢献や環境経営のブランドとして、ローソンはポジショニングされているはず。オーナーさんもそこに期待していた。競争回避策について、具体的な提案を後述する。
 
3.対象カテゴリーの拡張
 おにぎりと弁当だけでなく、対象カテゴリーをさらに広げなければ、当初目的の大幅なフードロス削減は難しい。現状は、平均2万円あるフードロスを半分にしようとするならば、デザート、麺類、チルド弁当、惣菜、サラダ、FF、パンなどに広げることが必要である。となると、今のような工場段階でシールを貼って、対象商品を消費者に選ばせる方式を転換する必要がある。
 
4.AC値引き対象シールの扱い
 このことに関しては、むしろローソン方式手間はなく、セブンイレブンが予定している時間管理方式(全ての日配品で消費期限の5時間前から値引き開始)が理にかなっている。あるいは、店頭で値引きシールを貼る方法もある。この方式は、砥部店の土居オーナーが実施していた。また、視察店舗ではないが、姫路の松本オーナーが土居オーナーよりももっとドラスティックに値引きシールを使って、廃棄を70パーセント減らしている。
 なお、店内でポイント還元シールを貼っておけば、廃棄品の選別にもマークとしてつかえる。また、廃棄商品の時間管理をバーコードスキャンやITタグを活用する手もあるのではないのか?
 
5.AC施策に対するアナザー提案:コーズマーケティング
 子供達の食の問題を解決するという、沖縄の取り組みは地域で高く評価されている。メデイアの露出もそこそこ高い。愛媛の問題は、還元された寄付のポイントがどこに行くかが具体的に見えないこと。そのため、知事が会見を開いた以降の期待の熱が急速に冷めてしまった。
 この問題を解決するためには、継続的な広報活動をローカルに展開する必要性がある。例えば、寄付テーマ別に委員会を立ち上げるとか、、
 
6.ポイントの使い方を個人に選択させる
 今はカードを持っていれば、5ポイントが個人に、5ポイントが寄付に回る。これをデフォルトとして、10ポイントを全部寄付に、あるいは10ポイント全てを自分のポイントに回す選択肢をカード保持者に与えるという案はどうだろうか?三案の中から選択するタイミングは、ポイントが還元される2ヶ月先になる?
 なお、この選択肢を与えるかどうかを衆議にて決めてもみてとよいのでは。マクドナルドやAKBのような総選挙を実施する!
  
<結論:私見>
 AC施策は、社会的な目標でもあるフードロス削減と、コンビニの課題であるオーナーさんの手取りを増やすことにある。そのために、コーズマーケティングを取り入れた。しかし、いまのポイント還元の仕組みは、複雑すぎて消費者が理解できていない。伝え方も含めて、もっと単純でわかりやすいシステムにした方がよい。
 なお、%表示より、円表示にしてはどうだろうか?5%付与ではなく?50円引きで表示する。