「植物市場(グリーン・マーケット)の未来」『JFMAニュース』2023年7月20日号

 オランダのオンライン・マガジン「FloralDaily.com」(6月30日号)に、気になる記事が掲載されていた。欧州で植物市場(Green Market)が拡大していることを紹介する記事だった。

 

 要約すると、「コロナ後でも、植物(house plants)への関心は持続可能である。成功事例として、オランダのオンライン植物宅配会社(「PLNTS.com」)の好調さがあげられる」。
 日本はどうなのか?知り合いの生産者の2人に尋ねてみた。どちらも関東圏で鉢物と花壇苗を生産している中規模の生産者である。彼らからは、「今年の春以降はきびしいですね」との回答が戻ってきた。「外食や旅行で外出する機会が増えているので、家庭で植物を楽しむ時間が減少しているのでは?」という説明だった。
ホームセンターの春以降の販売実績はどうなのか。「日本DIY・HC協会」の月次データを分析してみた。2023年5月調査では、2019年比で植物の販売が90~95%になっている。植物市場の未来について、日本では悲観的な傾向が見られた。

 そこで、専門家(企業家)の数人に意見を求めてみた。質問の内容は、「植物市場の停滞は、①欧州と日本の植物に対する態度(植物は日本ではレジャーやホビーの代替品)のちがいなのか? ②欧州に遅れてコロナ明けした日本でも、欧州のように植物へ関心が戻る?」だった。以下で、4人の見解を紹介してみる。

(1)大田花き 内藤育子さん:花研周辺では、①が2票で、第三の選択肢が1票ありました(全体としては、悲観的な意見が多数派?)。

(2)花恋人 野田将克さん:「コロナ禍ではギフト需要が減少、自宅需要が増加。コロナ前後ではギフト需要が増加、自宅需要が減少のため、単価がギフトのほうが高いため、売上は伸長している。質問については、②と思います。ギフト需要で非常に伸びているため。

(3)ヒトハナ 森田憲久さん:Googleトレンドをみると、2019年に戻るわけではないように思います。昨年と比べると1割ぐらいは検索数が減っています。①で新規に観葉植物を購入する量が減り、②のように関心を持った人が19年から増加し、検索数が維持されていると思います。

 全体的に見ると、内藤さんのように、悲観的な見方が大勢を占めている。ただし、野田さんが指摘するように、ギフト市場を見ると植物を贈る習慣は定着している。他方で、森田さんの示したデータでは、欧州と同じで「1割程度の検索数の減少」で収まっている。

 最後に、バロック・ジャパン(上場アパレル企業)で観葉植物の店舗事業を担当している大芦信彦さんから遅れて返信があった。「ライフシーンの中の「植欲」についてのマーケットニーズは拡大すると見ており、新築や転居と言ったシーンにおいても、(植物が)インテリアには欠かせないコンテンツになっていると感じます。ホームセンターに少し抵抗を感じる層に向けて、植物と鉢のコーディネートによるインテリア映えする提案にニーズがあるため、そこを心掛けていきたいです」(大芦さん)。

 気がつかないうちに、観葉植物を扱う店舗(シェルター・グリーン)が、5店舗から現在は10店舗に増えていた。コロナ禍で新規の購入層が増えた分は、元に戻ることはないだろう。周りの実務家たちの観察である。わたしの懸念は、払しょくされたようだ。