【ローソン本】資料探索:『ローソン25周年史(飛翔と挑戦)』を読む

 2000年11月に刊行された『ローソン25周年史』を午前中に読んでいた。コンビニの覇者「セブン-イレブン・ジャパン」が、今年で一足先に50周年を迎える。2年遅れて再来年の2025年に、ローソンも創業から50年目を迎えることになる。50周年記念事業の一つとして、筆者がローソン広報部の支援を受けながら記念誌を準備している。

 

 本の執筆のために、広報部から25周年で刊行された『ローソン25周年史』の原本を見せていただいた。書斎机の資料箱に眠っていたのだが、書籍の全体構想を固めるために再度、資料ボックスから取り出してきた。東証と大証に上場したばかりの2000年に、飛翔編と挑戦編の2部構成でまとめた社史である。

 わたしは、次のような視点から25周年の資料を読んでいた。

①コンビニを運営する企業として、この25年間で基本理念に変化はあったのか?

②それに続く4分の1世紀で、どのような事業が新しく起こったのか?また、それとの関連で基本理念の変更はあったのか?

③経営トップ、社員、加盟店オーナー、ベンダー、顧客、地域など、ステークホルダーは変わったのか?

 

 結論を言えば、ローソンの基本理念は、ほとんど変化していなかった。「飛翔編」で、当時の藤原謙次社長が述べているように、「マチのホットステーション」(#2)という概念を提唱したことが、便利なコンビニの概念に代わる新しいコンセプトだった。その概念は、株式公開に当たって直前の変更は、「マチと暮らす」という地域重視の考え方のスタートでもあった。

 「ライフライン」(#3)の考え方は、阪神淡路大震災(1995年)から生まれた考え方である。地域になくてはならない安全を確保する施設(ステーション)になることを、創業25年になるコンビ二エンスストアの新たな役割とした。

 この考え方は、2011年の東日本大震災での東北地方の復興支援活動に繋がっていく。その中に、「地域のオーナーさんとの共存共栄」(#5)の取り組みとしては、いまに繋がる「トイレ解放宣言」がある。

 わたしが驚いたのは、「FFS(フレッシュフーズサプライ)」の誕生(ベンダーとの商品共同開発)の波紋についてだった。FFSは、本来はベンダーさんとの関係構築のことを指している。しかし、その後の新浪社長時代に、この路線は「ローソンファーム」(農業への参入)の取り組みに繋がっている。同様に、成城石井やナチュラルローソンの買収劇とも関連している。

 

 飛翔編の最後は、企業としての「行動指針」の紹介で終わっている。そのまま引用する。

1.顧客満足の実現

2.オーナー満足の追求

3.Win-Winの関係強化(ベンダーとの関係)

 *ここまでは、3方良しの考え方そのものである。

4.企業価値の向上

 *ここではじめて、株主の視点が登場する。

5.市民としての良識と行動

 *企業社会の環境と地域への貢献

6.活力あふれる企業文化の構築

 *働く社員のための仕組みについて

 

 25年後に、社会のライフラインを支えるステーション(地域の施設)として、コンビニの位置づけは変わっていない。ローソンの企業理念は、その点では一貫している。新しいサービスや便利さの追求から、地域との共生を謳った企業理念は、その後も不変である。具体的で細かな仕組みや事業は変わっているが、本質に変化がないことを確認できた。

 そして、後編の「挑戦編」では、社員と企業が新しいことに取り組み挑戦者として姿勢が紹介されていた。

 

 「ローソンの25年史」を読む前に、実は、『ダイヤモンド・チェーンストア』を読んでいた。7月15日発売の「コンビニ復活」と題した特集号である。そこで、現在のローソンと25年前のローソンが比較できる。

 ビジネスの根本は、新浪-玉塚ー竹増のtrio時代を経ても、前任者の藤原時代と大きな変化は起こっていない。