【ローソン本】取材記録#2:無印良品ブランドの導入責任者、木下剛さんのインタビュー

 ローソン本のインタビュー第3弾は、「無印良品」の導入と店舗展開を企画した統括責任者、木下剛氏。現在は、営業本部営業推進部の部長さんです。連絡がうまくいかず、質問項目の送信が当日(4月23日)の朝になりました。当初の質問項目は、ややバランスの悪いものになっています。当日のインタビューでは順番を入れ替えました。

 

<インタビュー質問項目>(事前に送信)

 

日時:2023年4月23日午前10時~

インタビュアー:小川孔輔 (法政大学名誉教授)

同席:ローソン広報部(2人)

 

0.本人の略歴

 ・ローソン入社まで(空白の10年間など)

 ・入社後から現在まで

 

1.良品計画とローソンの新しい小売りの形

 ・空間づくりの課題について

 ・ローソンの立場から、プロセスを具体的にお願いします。

  *小川の印象は、ローソンの無印コーナーが、やや陳列が乱れていることが多いのでは?

 

2.会社が新しいことにチャレンジをさせてくれる社風

 ・原点はどこにあると思いますか?

  資料によると、「若い人に体験させてあげたい」となっている。

   → 若い人に、チャレンジする機会が少なくなっているのか?

 ・SV体験(オーナーさんと、床磨き)のインタビューで

 ・社風として、創意工夫する風土はあるのですか?

   → 最初のお二人についても感想をうかがっています

 

3.無印ブランドのローソン店舗への導入(広報リリース資料の確認)

 ・3段階での店舗導入の総括

 ①2020年6月:テスト導入(10店舗←110店舗)

  ・無印と同一価格、200アイテム

  ・結果の評価(商品アイテム、立地特性、ターゲット・購買行動)

  ・改善点は? 加盟店の評価は?

 ②2022年5月:関東甲信越地区(5000店)

  ・アイテムの変更はあったか?(200アイテム)

  ・業績の評価(客数、客単価、顧客層の変化)

  ・立地特性、地位特性のちがいは? (無印のある地域とない地域の差?)

 ③2023年4月:全国導入

  ・(2023年3月時点で)販売が好調なアイテム/不調なアイテム

  ・全国導入のメリット?

 

4.ブランディングの課題

 ・提携ブランディング(Co-branding)

   選択肢としては、①無印導入、②提携ブランド、③自社開発があった。

   質問:①を選択した理由は? ②と③ではなかったが、将来的には③もありなのか?

 ・現在までの総括

     ① 収益性

   ② 顧客ベースの拡大

   ③ 提携によるシナジー効果

   ④ ブランドの相乗り効果

   ⑤ その他

 ・将来の展開

 

5.ご自身のキャリア

 ・これまでのこと

 ・これから挑戦してみたいこと(希望の部署)

 ・なぜ、無印プロジェクトに関わることになったのか?

 

 

 <小川の感想コメント>

 インタビューで印象に残ったお話を、ここでは3つ紹介します。

 

(1)「驚きのパンツを作れ!」(竹増語録:広報リリース資料から)

 木下さんの問題意識として、ローソンの店舗で「日用品が”緊急時の補充買い”以外にはあまり売れていない」状況を打破したいと思っていた。MUJIとの共同プロジェクトがはじまった、2019年のある日のこと。全体会議で大勢の社員がいる前で、竹増社長が「ローソンでパンツを買ったことがある人はいますか?」という質問を投げかけた。ところが、誰一人として挙手したものがいなかった。

 竹増社長がその場で、海外のブランドで1枚4千円のパンツがあることを紹介。「驚きのパンツ」が扱える売り場づくりにチャレンジしよう!が社長からの提案だった。無印ブランドの導入によって、「日用品の目的買い」を実現することがミッションになった。

 そし、無印ブランドの全国導入で実際に起こったこと。今年4月第1週の文具の売り上げが、直近の3月比で10倍に跳ね上がった。新学期で学生さんが、ローソンで無印良品の文具を買うようになった貢献が大きい。「ローソンの店頭に幟を立てておいたら、それを見て学生さんたちが来店した効果だった」(木下さん)。

 

(2)無印ブランド導入による効果

 2年間のテスト期間を経ての全国導入決定は、①客単価の向上と②新規顧客の獲得の二重の効果による。

 前項(1)の文具の事例にみるように、②文具など無印良品の商品が入ることで、中高生や40代の主婦(お子さんの代理購買)がローソンに来店するようになった(カード非会員が新たに来店)。①無印ブランドの購入者は、客単価が1~2%ほど高くなる。

 ここで興味深い現象は、全国導入で東北地方(無印店舗の空白地帯)や中部地方では、無印の商品を買いにローソンに訪れるきゃすの増加。ローソンに無印の売り場コーナーができたことで、良品計画がネットで捕捉できなかった顧客が、ローソンでMUJI商品を購入するようになった(有店舗の全国展開効果)。

 東京都内でも似たような現象が起こっている。無印良品の店舗に行きづらい「都営新宿線沿線」のローソンでは、無印の導入効果が顕著である。東京下町(足立区、台東区、江戸川区、葛飾区など)でも同じことが起こっている?(小川の感想)。

 

(3)トイレチャレンジ

 木下さんが経験した、ローソンの「挑戦者精神」を体現したイベントのこと。最近になって「1億円チャレンジ」という社内事業が企画された。実施されたのは、横浜のFC店(前田明MOの店舗)。身障者によるトイレアート(壁面の描画)が実現して、お客さんからとても喜ばれている。

 前身は、身障者による「マチカフェのカップデザイン」(第一弾)。カップデザインに続いて、ティッシュボックスのユニークなデザインに発展(第二弾)。最終のイベントが、トイレアートになった(第三弾)。