【ローソン本】取材メモ#6:「冷凍流通による物流の効率化 商品実験販売」説明会から

 本日(8月22日)、ローソン本部(品川区大崎)にて、商品本部の涌井和弘氏(上級執行役員)と平野剛氏(エリアMD統括部長)がプレゼンターとなる「冷凍流通の説明会」を傍聴させていただいた。帰り際に、ローソンの大崎ゲートシティ店で、杉原広報部マネージャーの計らいで、6種類の冷凍おにぎりを自宅に持ち帰った。

 

 これから夕方にかけて、持ち帰った全品を試食するつもりでいる。大崎ゲートシティの会場で試食した「五目おこわおにぎり」は、格別に美味しかった。残りの5品も、解凍して試食するのが楽しみである(もち米は、冷凍品に向いているらしい)。

 そういえば、昨年オープンした「グリーローソン」(@北大塚)で、試食させていただいた冷凍弁当も美味しかった。ただし、冷凍弁当は、それほど即食性を高めることができない。その場で解凍して、すぐに食べるニーズには向かない商材であることがテスト販売から明らかになった。

 主として、持ち帰りで家庭内の在庫需要になる。そのため、当初に狙っていた「常温弁当からのスイッチ」(あえてカニバリ状況を創り出す)があまり起きなかった。今回は、常温おにぎりからのスイッチを期待して、冷凍おにぎりの販売に挑戦することになった。

 

 涌井さんの説明によると、冷凍おにぎりに取り組むことになった背景説明としては、①フードロス削減(店舗、製造工場)、②各種コストの上昇(燃料費、人件費)、③物流2024年問題への対処(ドライバー不足、配送ドライバーの労働時間上限設定)、買い場の減少(買い物難民、効率的な物流の実現)が挙げられていた。

 それ以外にも、冷凍おにぎりによって、新しい食習慣を作ることで市場を作り出すことを狙っている。物流の効率化やフードロスの削減という社会的課題に対して、おにぎりの購買と食べ方を変えること(消費者の行動変容)での解決を企図している。その意味では、今回の冷凍おにぎりの発売は、ある種の社会実験と位置付けることもできる。

 

 以下は、45分間の説明を聞いた感想と意見である。

1.涌井さんの説明で興味深かったのは、常温おにぎりに対する冷凍おにぎりの優位性についてだった。意外なことには、保存期間だけでなく、味に関しても優位性があることがわかっている。

 ①冷凍おにぎりでは、本来は添加物を用いないようすることができる(今回は味覚実験も兼ねているので、添加物を使用している)。②瞬間的におにぎり冷凍することで、「塩慣れ」がなくなる(常温の場合は、お米に塩分がしみ込んでいくので、おにぎりの味が濃くなる傾向がある)。そのため、冷凍で減塩効果が発揮できる。結果として、③配送頻度の限界(日に2便)が突破できる可能性がある(→日に1便以下)。

 

2.冷凍おにぎりの導入は、物流システムを効率化することに貢献できる。

 冷凍品では、基本的に商品寿命が長くなるので(3か月以上)、中間の物流ノード(おにぎり製造工場、店舗のバックヤード、自宅)のどこにでも、商品をほぼ劣化させずに在庫しておくことができる。必要なときには解凍すればよいので、無理をして迅速に配送する必要がなくなる。

 結果として、いま喫緊の社会的な課題ともなっている物流の効率が改善できる。

 

3.常温と冷凍の混在について。

 聴講に来ていた新聞・雑誌記者の方からも質問があった。「常温のおにぎりも置くのか?」である。答えは、「常温おにぎりと冷凍おにぎりは、コンビニの売り場(棚)で当面は混在することになる」だった。常温と冷凍の両者が混在することの前提は、「いくらやすじこ」のおにぎりや「ぱりぱり海苔」のおにぎりは、冷凍すると素材の良さが失われしまうからである。

 わたしもそれはそうだろうと考えたが、もしかすると、解凍方法や電子レンジの性能向上によっては、良い解決方法があるのかもしれない。たとえば、わが家では、海鮮いくらは冷凍保存しているが、解凍したときに問題はとくに起こってはいない。

 もうひとつの解決方法は、ローソンがほとんどの店で「まちかど厨房」を持っていることだろう。どうしても必要なおにぎりの具と海苔については、店舗で調理をすることにすればよい。海苔のパリパリ感や美味しいいくらの触感は、店内調理で維持できるだろう。他社では早急に対応ができない分、ローソンとしては競争力があるやり方になる。

 

4.番外編(フードロス、学校給食、子ども食堂)

 涌井さんの話を伺っていて、ひとつのアイデアが浮かんだ。それは、冷凍おにぎりを学校給食で採用してもらうことだ。とりわけ、センター方式で学校給食を実施しているところでは、アツアツのご飯が食べらえれないという問題が発生している。地区の給食センターから学校に運んでいる間に料理が冷めてしまう。

 また、センター方式の問題は、大量に作ることで食中毒のリスクにさらされることである。さらには、メニューが画一化されることも指摘されている(藤原辰史『給食の歴史』(岩波新書、2018年)。この点を解決するためのひとつの方法として、冷凍おにぎりを学校給食へ導入することが考えられる。また、老人向けの介護食など宅配にも活用できるだろう。

 その際は、ローソンのベンダーさんが、製造と配送の役割を担うことができる。小学生にとっては、冷凍おにぎりは添加物が入っていない安全な料理である。お年寄りにとっては、塩分控えめの健康な食品である。

 このことは、フードロス削減のために考えついて値引きと寄付の取り組み「アナザーチョイス」(涌井副部長統括プロジェクト)で、子ども食堂に食品を寄付していた。同じ発想から、賞味期限に関係なく、アツアツのおにぎりを「フードバンク」(子ども食堂)に寄付することもできる。

 この点に関しては、【書評】藤原辰史(2018)『給食の歴史』岩波新書(★★★★★)(https://kosuke-ogawa.com/?eid=6154#sequel)を参照のこと。

 

 

 <参考>「ニュースリリース」(2023年8月22日、ローソン広報部から)

 株式会社ローソン(本社:東京都品川区、代表取締役 社長:竹増 貞信、以下「ローソン」)は物流関連の人手不足が深刻となる中、冷凍流通による将来的な物流の効率化を目的に、8 月 22 日(火)から 11 月 20 日(月)までの 3 ヶ月間福島県と東京都の
合計 21 店舗で、常温で販売しているおにぎり 6 品を冷凍おにぎりとして発売する実験を実施いたします。冷凍おにぎりの販売により、店舗での食品ロス削減効果も見込めます。今回の実験販売の結果をふまえ、その後の店舗拡大などを検討してまいります。
(売場展開イメージ) (販促物イメージ)

 

 ローソンでは 2022 年 11 月に東京都豊島区にオープンした「グリーンローソン」で、冷凍弁当の販売を行ってまいりました。今回、弁当よりさらに即食ニーズが高く販売数が多いおにぎりで、冷凍による実験販売を実施します。実験販売する冷凍おにぎりは、通常製造しているおにぎりをベンダー工場で冷凍し冷凍物流で店舗に納品したもので、電子レンジで温めて召し上がっていただきます。

 今回の実験販売は、リサーチ会社の調査(※)において、全国で最もおにぎりを温めるかを聞かれる結果となった福島県と一般的な東京都の店舗で行い、温めて食べる冷凍おにぎりがお客様にご支持いただけるかの地域差などを検証します。
(※)株式会社マクロミル調べ(調査期間:2020 年 1 月 10 日~1 月 22 日)

 

<実験販売概要>
・販売期間(予定) : 2023 年 8 月 22 日(火)~2023 年 11 月 20 日(月)
・実験店舗 : 福島県の 10 店舗、東京都の 11 店舗の合計 21 店舗
・販売場所 : 冷凍ケース
・販売商品 : 6 品(焼さけおにぎり、赤飯おこわおにぎり、五目おこわおにぎり、鶏五目おにぎり、胡麻さけおにぎり、わかめごはんおにぎり)*税込み138円
・通常のおにぎり : これまで通り販売し、冷凍おにぎりと併売