静かに、熟成の時を待つ

 超がつくほどの、せっかちな性格である。待つことが苦手な人間だ。それは自らも自覚している。ここ数か月、ブログで取り上げてきた案件はすべて、すぐには先に進めないプロジェクトばかりである。能代市の東雲羊羹の事業承継、富山県の本わさびの施設栽培事業の産地形成。自分が書いた処女小説の出版。インテージで企画している「消費者インサイト」のセミナー案件など。

 

 これまでの実績では、瞬時の判断から事を進めてきた。即断即決が、わたしの必勝パターンだった。リストアップしてみる。

 ①大学院の中小企業診断士MBAコース、②理工学部機械工学科航空操縦専修(パイロット養成コース)、③生命科学部植物医科学科(植物のお医者さん)、④JCSI(日本版顧客満足度指数調査)、⑤JFMA(日本フローラルマーケティング協会)の設立、⑥法政大学清成総長の実現、⑦ハーフマラソンの47都道府県制覇など。

 時間をかけて実現したものは、⑤と⑦くらいのものだろう。その他は、瞬間芸で実現したプロジェクトである。ところが、定年退職後に始めた案件は、ここにきてすべて時間がかかるものばかりのようだ。わたしには向かない緩慢な時間の経過とゆったりとしたペース配分の案件である。年齢を経てから取り組んだプロジェクトは、なかなかタフな相手や環境ばかりである。

 

 大学を定年退職したので、時間はたっぷりある。すべての案件は、それほど急ぐ必要もない。たとえ実現できなくても、自分が困ることはない。そして、誰かが困窮するほどのシリアスな案件というわけでもない。

 だから、ゆっくりじっくり構えて、熟成の時間を待つとよい。世間も自分もそのように考えて、過ぎていく時間や事業環境が、ゆっくりとこちらの都合がいいように変化するタイミングを待っている。以前の自分では考えられないことだ。基本的な取り組み姿勢の変化だと思う。物事が成熟する時間を、静かに待っている。

 それでよろしいのだと思う。今度の本(52冊目になる私小説)が出来上がると、ほぼ自分のやりたかったことがすべて完結する。思い残すことはほぼなくなった。これからまだ、身長の高さまで本を書き続けるつもりではいるが、もしかすると、165センチを超える前に、自分の命が尽きてしまうかもしれない。

 

 それでもかまわないだろう。先日、元ヤオコーの小林副社長が亡くなった。わたしより1か月遅れの誕生日で、72歳を少し前にしても逝去だった。番頭さんは早死にかもしれない。激しく働いてきたビジネスマンは、心臓に負荷がかかるようだ。

 わたしの肉親には、アルコール依存症が多い。これも仕事上のストレスが原因だと思っている。わたしは、心臓に毛が生えているので、もしも倒れるとしたらアルコールと脳溢血だろう。10月の52冊目の書籍の発売まで、なんとか生き延びて本の完成を祝ってもらいたいと思っている。

 ワインやウイスキーの熟成を待つように、自分の仕事の熟成も待ちたい。いつか、そんな気持ちになれるだろうか?そうそう、そんな気分になれそうな変化を、自分で感じるようになっている。