袋物と言われるバッグ類や高級時計などの偽ブランド品が横行している。人気のトップは、日本市場のおかげで潤っているルイヴィトンである。
以下は、ルイ・ヴィトン・ジャパン(株)の光岡肇さんの話(「20世紀の商標制度構築に向けた調査研究会」10月3日)を筆者の視点からまとめたものである。
かつては、消費者がだまされて偽物をつかまされるのがふつうだった。加害者と被害者の立場は明確であった。ところが、いまや消費者はそれと知っていて偽ブランド品を購入している(ヴィトンの調査によると、75%の消費者は「悪いこと」だとわかっていながらニセモノを購入している)。
知的所有権を保護するという立場から考えると、これは悩ましい事態である。というのは、偽ブランドであることを知った上で、まがい物のヴィトンを購入しているということは、商行為を通して自らが商標権(ブランド)の侵害に荷担しているからである。
光岡氏(ヴィトン側)の主張によれば、被害は2通りである。ひとつは、ニセモノを横行することで、ヴィトンやロレックスのようなブランドメーカーは、直接のビジネス(売上げ)を失ってしまう。二番目は、劣悪な品質の商品が出回ることによって、本物のブランドのイメージが損なわれる。本当にそうだろうか?
一昨日の委員会でわたしが光岡氏に提起した素朴な疑問は、以下のようなものであった。ブランド価値の侵害についていえば、どうせニセモノを買うような人は、本物を買うことはないだろう。だから、実際的には「売りそこない」(販売ロス)はないのではないか。むしろ、ニセモノを購入することがブランドの浸透に寄与して、将来のビジネスにはプラスになることさえ考えられるのではないか。
二番目に、ニセモノが本物のイメージを損なうことは考えにくい。というのは、デザインにしても素材にしても、ニセモノは本物とは似て非なるものであって、消費者も納得して購入しているのである。本物のイメージと価値は不変である。むしろ、本物が際だつくらいでなくてはならない。わたしはそう思ったのだが、また、わたしの意見に賛成してくれた委員も少なくはなかった。
余談であるが、フランスでは、特別な犯罪者でなくて一般人であっても、ニセモノ・ヴィトンやグッチを持っているとその場で没収されるそうである。ブランド立国の真剣さが伝わってくる話ではあった。なお、偽ブランドの主たる輸入国は韓国で、全体の約80%を占めるという。完成品としてではなく、部品として輸入されることも多いらしい。
輸入(輸出)の手段としては、最近、個人向け郵便(EMS)を悪用することが増えている。ルイヴィトンに限れば、摘発されているものだけで、年間約10万件である。相当なアングラ市場の規模であることがわかる。その利益の多くは、○暴資金に流れているのであろう。渋谷界隈の露店販売では、一日の売上げが約100万円である。初犯の罰則が30万円だから、刑事罰でもなかればとても規制にならない。そして、その手先は外国人不法滞在者である。ブランドイメージの希釈より、こちらのほうが問題である。