「 これまでの引っ越しの回数を教えてください!」というお願いを、3月15日にブログに書いた。二日間で70名(最終的には90名)から「引っ越しの回数」について回答をいただいた。速報版は3月17日に発表しているが、結果を記事として地元紙で書くことになった。データの解釈がなかなかおもしろい。
「日米の引っ越し回数」『北羽新報』2018年3月号
文・小川孔輔(法政大学)
春は引っ越しの季節です。卒業、就職、転職、異動、そして結婚や入学で住処が変わります。人生の節目のイベントに、引っ越しはつきものです。先日、仕事仲間の女性から、「先生は、いままで何度、引っ越しなさいましたか?」と尋ねられました。
引っ越しの回数など、いままで数えたことがありません。いい機会だと思い、これまで住んだ場所をすべてカウントしてみました。18歳のときに秋田から上京して、住み替えは合計で12回らしいのです。
能代の実家(追分町)から、①杉並区のアパートに住んでいた従兄弟のところに転がり込んだのが、初めての引っ越しでした。翌年、従兄弟が就職して独身寮に入ったのを機会に、生まれてはじめて、②都立大学前の学生寮で一人暮らしをはじめました。
その後に移り住んだ場所の地名を列挙してみます(カッコ内は、ライフイベント)。③文京区西方(キャンパスの移動)→④文京区湯島(大学院進学)→⑤千葉県市川市鬼高(⑥結婚、町内で住み替え)→⑦米国カリフォルニア州バークレイ市(留学)→⑧同オークランド市(アパートから一戸建てへ)→⑨市川市鬼高(帰国、⑩町内で住み替え)→⑪千葉県白井市(出産で家族が増える)→(⑫東京都墨田区、仕事と通勤のため)。
最後の場所(東京下町)は、仕事場としてマンションの一室を借りているだけです。厳密な意味では、引っ越しとは言えないかもしれません。
全12回の引っ越しは、日本人としては多いほうだと思います。ところが、アメリカ人は日本人の3倍も引っ越しを重ねているというブログの記事を、わたしに引っ越しの回数をたずねた女性が探し出してきてくれました(ご本人は、11回目の引っ越しだそうです)。
「日本人の平均引っ越し回数は、生涯で6回。それに対してアメリカは、なんと17回!」らしいのです。わたしの引っ越し回数は平均的な日本人の2倍ですが、米国人の標準からすれば平均以下ということになります。
米国人が引っ越しを繰り返すのは、アメリカの社会構造が日本とは大きく異なっているからだと思います。アメリカ人の価値観の根っこにあるのは、個人主義の考え方です。厳しい競争社会で生きていくための知恵として、米国の家庭では、子供のころから自分の意見をはっきり言うように躾られます。
そして、彼らは「アメリカンドリーム」を追い求めます。チャンスはどこに転がっているかわかりません。いつ幸運の女神が微笑んでくれるのかもわかりません。なので、目の前に成功の機会が開けていると確信したら、アメリカ人は地理的な移動をいとわないのです。社会の成り立ちが、引っ越しを奨励するようにできたお国柄なのです。
住宅サービス産業も、そうした国民性を反映しています。米国留学中の二年間で、わたしたち家族は2度の引っ越しを経験しました。日本での引っ越しに比べて、アメリカでの住み替えは実に簡単した。なぜなら、家具付きのアパートがふつうだからです。契約したその日から、何の不便もなく生活を始めることができます。
最後に、日本での引っ越しに話を戻してみます。わたしのように、たくさんの引っ越しを経験しているひとは、一般的にはどのような特徴をもった人たちなのでしょうか?いま周囲の友人・知人にアンケートを送って、引っ越し回数のデータを集めています。わたしの推測は、つぎのようなものです。
地方出身者で都市部に居住、高学歴で高収入、転職回数が多い、教育熱心(孟母三遷の教え!)、そして、場合によっては離婚経験者。さて、この予想は当たっているでしょうか?