『プレジデントネクスト』 2015年11月号を掲載する
今回取り上げたミニストップの「Xフライドポテト」は、表面をX型にカットすることでサクサクとした食感を実現。販売から10年たったいまも、ミニストップの人気商品の一つである。もともと、このX型のポテトはドイツのとある地方で食べられていたものを採用したという。
海外の食べ物を日本で展開した場合、きちん定着するものと、ブームが一過性に終わって消えていくものがある。日本で受け入れられるものとそうではないものの差は、いったいどこにあるのだろうか。
「日本人向けのあっさりとした味つけものが受け入れられそうですが、じつはあまり関係がありません。」
そう指摘するのは、法政大学大学院の小川孔輔教授だ。
「日本人は雑食で、味の濃いものから薄いもの、甘いものから辛いものまで、基本的には好き嫌いなく何でも食べます。それに加えて、一見、日本人に合わなさそうな料理をローカライズして自分たちのものにする懐の深さを持っています」
たとえばカレーはやラーメンは日本人の伝統的な味覚からほど遠いが、日本流にアレンジされて、いまや国民食の一つになっている。それにとどまらず、ココイチや味千ラーメンなどの外食チェーンを通して世界に逆輸出されるほどだ。
「これらの例からわかるように、日本人は味覚の適応力が高い。ストライクゾーンが広いので、この味だから定着した、あの味だからダメだったというケースは少ないでしょう」
味があまり関係ないのなら、何が定着するか否かを分けるのか。小川教授が注目するのは、「経験」だ。
「人間は味に関して保守的な傾向が強く、未知のものにはあまり近づこうとしません。日本人は適応力が高いのである程度の経験を積めば積極的に取り入れますが、最初の壁は高い。日本人にウケなかったものは、その最初の壁で躓いたのです」
例として挙げるのは、アメリカで人気のメキシコ料理のファストフードチェーン「タコベル」だ。タコベルは1980年代に日本に進出したが、当時メキシコ料理は日本人に馴染みが薄く、あえなく撤退した。
「今年5月に日本に再上陸しましたが、今度は違うでしょう。’80年代は経験がなかったですが、その後、トルティーヤチップスのお菓子が発売されるなどして、メキシコ料理は身近になっています」
では、未経験の味を身近なものにする方法はあるのだろうか。
「参考になるのは、『レッドブル』でしょう。日本人にはエナジードリンクを日常的に飲む習慣がありませんでしたが、日本展開時にサンプルを配りまくって、経験の壁を突破しました」
味をよくする工夫も大事だが、大切なのは、その味をいかに経験させて身近なものにするか。マーケティング施策も、その点が重要だ。
マーケのヒント
・日本人向けの味つけにこだわらなくていい!
・サンプルを配るなどして、経験を積ませることを第一に考える