『プレジデントネクスト』 2015年10月号を掲載する
ミニストップの看板商品「ソフトクリームバニラ」。定番商品だけに味を変えていてないのかと思いきや、2011年に10年ぶりにリニューアルを敢行。さらに2014年には国産卵黄を使って、濃厚さやバニラ感をアップさせている。すでに多くのファンがいる商品なのに、あえて冒険してリニューアルする意味はどこにあるのか。
「どんなに長く愛され続けているロングセラー商品も、10年に1回は大きなてこ入れをする必要がある」
と解説するのは、法政大学経営大学院の小川孔輔教授だ。10年に1回のリニューアルが必要になる理由は二つある。まず一つは、10年経てば消費者の嗜好が変わるからだ。
「ここ10年でいうと、消費者は刺激の強い味から、ヘルシーであっさりした味を好むようになってきました。消費者の味覚が変化しているのに、味がそのままでは『味が落ちてきた』『飽きた』と思われるおそれがあります」
もう一つ、競合商品の品質向上も見逃せない。
「食材の加工技術や流通技術は日々、進化しています。また、素材も品種改良などによって10年前より品質が良くなっています。競合他社が改良された素材を使い、新しい技術で商品開発をしているのに、定番商品だからといって同じ素材、同じ技術でつくっていては相対的に見劣りしていきます」
品質向上を目指してリニューアルすれば、コストが増えて値上げを余儀なくされることもあるだろう。値上げは客離れを起こすリスクもあるので難しいところだが、小川先生は「おいしくなったとしっかり打ち出せるなら、値上げもあり」という。例として挙げるのは、2010年に主力のちゃんぽんを刷新したリンガーハットだ。
「リンガーハットはクーポンで集客する戦略を取っていました。割引して売るにはコストを抑える必要があり、同社は中国産の冷凍野菜を使うことで対応していました。しかし、中国産野菜の品質に疑問符がつけられるようになり、売上が減少。そこで40~100円の値上げに踏み切り、野菜をすべて国産に切り替えました。値上げは勇気がいることですが、このリニューアルが消費者に評価されて、売上を回復させています」
おいしくなったことを消費者に印象づけられるなら、値上げを伴うリニューアルも有効なのだ。
一方、インパクトの小さいリニューアルで値上げは厳禁。それどころか、リニューアルしたこともヘタに宣伝しないほうがいいらしい。
「消費者は味に関して保守的です。何かが変わったというたけで離れていく客もいるので、マイナーチェンジのときは刺激を与えないことが大切。こっそりリニューアルして、消費者に『いつのまにかおいしくなった』と思わせるのが理想です」
ロングセラー商品にリニューアルはつきものだが、やり方を間違えないように注意したいところだ。
マーケのヒント
・インパクトが大きいリニューアルなら、値上げも辞さず
・マイナーチェンジなら、消費者を刺激しないようにこっそりと。