自然の水を汲んでボトルに入れるだけなのに、なぜ150円もするの?もっと安くてもいいのでは?ミネラルウォーターの疑問に迫った!(この回の話は、拙著『お客に言えない!「利益」の法則』青春出版社から、定価1050円に収録されています)
材料費がかからないのに、ジュースやお茶とほぼ同じ値段の不思議を解明!
ミネラルウォーターの500mlサイズは、通常100~150円で販売されています。これは同じサイズのお茶と変わらない値段。PB商品のお茶と比べると、むしろ水のほうが高いケースもあります。何の味もついていないただの水のほうが高いのは、いったいどうしてでしょうか?
ミネラルウォーターの原価をチェックしてみましょう。ある名水を詰めた商品は市場価格が130円で、小売店には50円で卸しています。50円のうち、意外にかかっているのが容れ物代。ペットボトルの容器が15円、キャップが3円、ラベルが2円50銭、段ボール代が1本あたり2円で、計22.5円が容れ物代になります。
中身の水はタダです。名水は土地さえあれば汲み放題で、水道料金も必要ありません。土地の取得代や工場設備の初期投資は必要ですが、1本あたりのコスト負担は3.5円で計算しているそうです。
汲みあげた水は、ろ過したり加熱するなどの処理が必要になります。このボトリングにかかる人件費や電気代は1本あたり13円。
製造したミネラルウォーターは、問屋や小売店まで運ばなくてはいけません。今回調査した工場から関東への物流費は、1本あたり8円。ここまでの合計47円が原価になります。
ミネラルウォーターのメーカーは儲からない!?
これを50円で卸すと、1本あたりの利益はわずか3円。メーカーにとっては、利幅が薄くて儲からない商品だといえます。
ちなみにお茶のほうは、お茶っ葉や水道代がかかりますが、水と比べるとボーリングなどの初期投資や工場設備代が割安になります。「お茶と水では、おそらく原価はほとんど変わらないのではないでしょうか」(小川先生)
ミネラルウォーターについて注目すべきは、むしろ小売店の取り分です。卸売価格50円を店頭130円で売れば1本につき80円の利益。メーカーの利益が1本3円であるのと比べると雲泥の差です。ただ、ミネラルウォーターはブランドイメージによって売れ行きが大きく左右される商品です。そのため安く売りすぎると、消費者に「水道水と変わらないのでは?」という印象を与えてしまい、逆に敬遠される要因になります。「ブランドイメージを損なわず、なおかつ高すぎない値段ということで、お茶と同じ程度の値段になっているのでしょう」(小川先生)
ちなみに為替を無視すれば、輸入品のミネラルウォーターも製造原価はたいして変わらないとか。ただし、輸入品の場合は輸送費(関税含む)がかかります。国内海外に限らず、水は基本的に現地で飲むとタダ。私たちは水そのものではなく、輸送費にお金を払っておいしい水を飲んでいるのです。