「LINEの秘密」『Big tomorrow』連載第66回(2013年12月号)

 スマホやパソコンにダウンロードするだけで、ライン同士なら通話料が無料という、話題の通信アプリ。なぜ、通話料が無料になるのか?儲かる仕組みはどうなっているのか?


登録者がいまや1億5000万人を突破したLINE。その人気の秘密はどこにあるのか?
 若い人たちを中心に絶大な人気を誇る無料通話&チャットアプリ「LINE」。そもそも、なぜタダで電話ができるのでしょうか?
「LINEの通話が無料なのは、電話回線ではなくインターネット回線を使っているからです」
と語るのは小川孔輔先生。
「LINEはインターネット回線を使ったパケット通信。そのため、通話するとパケット料金がかかります。ただ、多くの人はパケット定額サービスを利用しているので、使っても使わなくても月々の料金は変わりません。通話料は無料ではなく、毎月のパケット料金に含まれているといったほうが正確です」

スタンプを購入する意外なユーザーとは?
 LINEは通話料が無料なだけでなく、アプリそのものも無料です。いったいどうやって儲けているのでしょうか?
「売り上げの柱になっているのはスタンプ(テキストメッセージに挿入できるイラスト)です。今年7月はスタンプだけで10億円の売上があったとか。今期4~6月の売上が98億円なので、売上の3割前後はスタンプが稼ぎ出している計算になります」
 ただ、LINEには無料で使えるスタンプも多数あります。にもかかわらず、有料スタンプをわざわざ買う人がいるのでしょうか?
「私も疑問に思ってゼミの学生たちにヒアリングをしたのですが、有料スタンプを購入している学生はゼロ。みんな無料のもので十分楽しめると言っていました」
ではいったい誰が?
「さらにヒアリングを進めると、スタンプを購入しているのは学生たちの親世代だとわかりました。中高年は大人になってからケータイやスマホが登場したので、文字入力が苦手。長文を打つより、スタンプで表現したほうがラクなのだとか。ユーザーは若者が多いと思いますが、スタンプ購入は若い世代より、むしろ大人世代なのでしょう」
 また、LINEの売上の新たな柱に育ちつつあるのが、企業向けの販促サービス。たとえば企業にアカウントを持たせる「公式アカウント」サービスや、その廉価版である「ビジネスアカウントLINE@」も、その1つです。
「アカウントを作ってユーザーに『友だち』登録してもらえば、企業は販促情報を好きなときにユーザーに届けられます。メールマガジンも同じようなプッシュ型の情報発信ですが、開封率はLINEのほうが高く、企業にとっては魅力的です」
 ユーザー離れを引き起こしかねないデメリットとは?
 また今年4月から開始した「LINEマストバイ」は、ユーザーが指定の商品を購入してシリアルコードを入力すると、オリジナルのスタンプがもらえるサービス。小川先生は、「スタンプは欲しい、でも自分で買うほどでもないという若い世代に効果的な販促かも」と評価します。
 ただ、企業向けの販促サービスにはデメリットも…。
「無料ツールに広告や販促情報が目立つようになると、顧客離れが起きます。無料ツールにとっては顧客数が大事な資産。ユーザーが減り始めると販促ツールとしての魅力もなくなるので、たとえ利益が上がっても、企業向けサービスはほどほどにしておいたほうがいい」
LINEがどのような進化を遂げるのか。今後も要チェックです!