長引く不況の影響で、お客の財布のヒモはますます固くなる一方。では、どうしたらお客に「買いたい」と思ってもらえるのか?不況を打開する売上拡大の新たな手法を公開!
飲食店を中心に広がっている「もう一品いかが?」の効果とは?
「プラス100円でもう一品」「弁当とセットならミソ汁50円引き」など…。最近、メインの商品に加えてもう一品の購入をすすめる店が増えてきた。小川孔輔先生も、東北新幹線の車中でそれを体験。
「車内販売でコーヒー(300円)を注文したら、『パウンドケーキも一緒にいかがですか?』と声をかけられました。単品で180円のパウンドケーキが、コーヒーと一緒なら100円になるのだそうです」
80円も安く売ったら損をするのでは?そんな疑問が…。
「追加で割引販売しても、原価を割らないかぎり企業は損しません。企業側の売上アップ作戦のひとつですよ」
では、実際に追加販売でどれほど売上が増えるのか?
「東北新幹線の場合、販売員がすすめると、4人に1人が追加購入するとか。ということは…。客単価は、コーヒー1杯(300円)+ケーキ(100円)×1/4で325円に。追加購入がなかった場合はコーヒー1杯(300円)ですから、販売員が一声かけるだけで売上が約1割増える計算です」
なぜ店員がすすめるのはフライドポテトなのか?
ただし、追加提案で企業がトクをするにはある条件が…。
「追加提案のたびに接客に手間どると、他にコーヒーを買いたいお客がいたとき、そちらに手が回らなくなるリスクがあります。割引した利益率の低い商品を売ろうとして、定価で売れる商品の販売機会を逃すのは本末転倒。そのため、追加提案するのはパウンドケーキのようにプリパッケージされた手間のかからない商品に限られます」
たしかに、追加ですすめられるのは、作り置きが可能な商品(ファストフードのポテト)や、セルフサービス(ファミレスのドリンクバー)などオペレーションの負担が少ないものばかりです。
「同じ意味で、提案する時間帯も大切。ランチタイムの忙しいときに追加提案で余計な手間をかけるのは時間のロス。どの業種でも、追加提案はアイドルタイム(忙しくない時間帯)に行われているはずです」
それにしても…。
提案する時間がもったいないなら、最初からメニューにセット割引料金を書いておけばいいのでは?
「セット販売と追加提案では、お客の反応が違います。最初から割引料金が明示されていると、人は論理的に損得を計算して判断を下します。一方、突然の提案は冷静な判断を鈍らせ、衝動買いを促しやすい。対面販売で追加注文をする人が多いのは、こんな理由です」
デフレの進行とともに「もう一品」が流行る 追加提案は、デフレに必須の戦術とも言える。
「デフレの影響で多くの業界で値下げが起きています。たとえばスーパーでは、いままで1回の買い物で単価200円×10アイテムで平均2000円使っていたのに、いまは一品180円で、客単価は1800円に下がりました。客単価を維持するには、『もう一品いかが?』の戦略で180円×11アイテムに顧客を導く必要があります」
飲食店やスーパー以外でも、今後はさまざまな業種で「ご一緒に○○もいかがですか?」が流行る可能性が大だ。