「コロッケビジネスの秘密」『Big tomorrow』連載第35回(2011年6月号)

 カレーと並ぶ国民食として愛されるコロッケ。数あるお惣菜のなかで、なぜコロッケはこんなに人気があるのか?どのくらい儲かるのか?その秘密に迫った!


節約志向が高まるほどコロッケが売れるその理由とは?
 スーパーのお惣菜のなかで一番売れるものは何か、知ってますか?エビフライ?餃子?じつはコロッケが正解!
 100円玉で買える手ごろな値段が人気の理由ですが、そもそも原価はいくら?
「安いですよ。ただ、業態によっても若干の違いがあるんです」
 と語るのは小川孔輔先生。
 揚げたてコロッケを売っている主な業態は、3つ。
 お肉屋さんなどが店頭で売っている、町のお惣菜屋さん。お惣菜売り場のあるコンビニやスーパー。ロック・フィールドに代表されるお惣菜専門チェーン。
「このうちもっとも原価が高いのは、町のお惣菜屋さん。ほとんどが個人経営ですから、それほど大量の仕入れはできない。だから原価も高くなりがち。1個70円程度で販売しているお店が多く、材料費は30~35円。利益が少ないように思えますが、町のお惣菜屋さんは、“売り切れゴメン”が可能で、ロスがほとんど発生しない。だから十分にやっていけるのです」

コンビニコロッケを買う意外なお客さんとは?
 一方、一個当たり80円程度で販売しているスーパーはどうか?
「スーパーの多くは材料を大量に仕入れて、あとは油で揚げるだけという状態までカミッサリー(一次加工工場)で作ります。そのため、1個あたりの材料費や加工費は推定20~25円でかなり安い。ただ、大量生産になると在庫管理や物流コストが増えるので、1個あたりの利益は町のお惣菜屋さんと変わらないはず。もう1つのお惣菜専門チェーンは、町のお惣菜屋さんとスーパーの中間くらいです」
 ところで、最近はコンビニでもコロッケえおレジ横で売る店が出てきました。その背景には、コンビニ利用客の高齢化があるようです。
「核家族化や高齢化が進み、お年寄りの1人暮らしが増えています。1人で少量の料理をするのは大変ですが、いまは節約傾向が強くて外食も難しい。そこで頼りになるのが中食(お惣菜)です。町の商店街がシャッター通りになって、お惣菜屋さん自体が減ってしまった。そうしたニーズをすくいあげたのがコンビニのホットスナック。コンビニはいわば、昔のお惣菜屋さんの代わりなのです」

コロッケがますます売れるかもしれないその根拠は…
 それにしても、なぜコロッケは売れるのでしょうか?
「ごはんのおかずにもなるし、小腹が空いたときのおやつとしても手頃。多面性があり、どのシーンにも合う。それに安いことも売れる理由でしょう。景気が悪いときほど、安いお惣菜のシェアは高まりますから。外食を控えて食費を節約し、家で食べるおかずとしてますますコロッケは人気になるでしょう」
震災ショックで消費の冷え込みが予想されますが、コロッケは、そんなムードを吹き飛ばすくらい力強く売れる可能性大です。

コロッケの値段の比較
コンビニ(ローソン)80円(税込)
惣菜店・大型店(RF1)105円
惣菜店・個人経営店(都内10店で調査)70円~110円