「これは売れる!」と思っても、確実な保証はない。そこで、事前販売によって消費者の反応を探るのがテストマーケティングだ。その結果によってどんなことがわかるのか?
静岡市で先行販売した結果が全国展開を左右する意外な理由とは?
静岡に出張に行くと、東京ではまだ売られていない新商品を見かけることがありませんか?
「静岡市はテストマーケティングによく利用される街。そこで成功すれば、全国で発売されるようになります」
と解説するのは、小川孔輔先生。
テストマーケティングとは、新商品を全国展開する前に一部の地域で試験的に先行販売する手法のこと。メーカーは、その結果を見て改良を加えます。
「有名なのは花王です。同社は化粧品事業に進出する際、新ブランド『ソフィーナ』を静岡でテスト。その結果、商品に企業名をつけたほうがわかりやすいと判断し、最終的に『花王ソフィーナ』としました」
テストマーケティング地にふさわしい街の条件とは?
でも、なぜ静岡なのでしょう?
「テストに重要なのは市場規模。小さすぎると参考にならないし、大きすぎるとコストがかかる。ちょうどよいのは人口100万人。静岡市は70万人前後なので合格点です」
都市として独立しているという好条件も備えています。
「100万人都市は商業施設が完備しているので、住民は他の大都市に積極的に買い物に行きません。また、ローカルのテレビやラジオがちょうどよくその地域をカバーしていることが多い。メディアのカバー範囲と人々の消費活動の範囲が重なると広告効果がテストしやすいのですが、静岡はどちらの条件も満たしているのです」
さらに見逃せないのが、人口構成比や所得平均。
「人口構成比や所得額に偏りがあると、テストの結果にも偏りが出ます。そのため、同じような条件を有した都市が使われることもあります。たとえば札幌市、仙台市、広島市、福岡市がその代表的な例です」
消費者の反応が、値段にも反映されてリーズナブルに!
テストマーケティングした商品が実際に全国展開されるのは7割前後。
成功率は高い印象です。
「判断の基準になるのは、トライアル購買数(1回目)とリピート率(2回目以降)。どちらも高ければ全国展開にゴーサイン。トライアルのみ高くリピートが低い場合は、プロモーションは成功しているが製品の満足度は低いということなので、製品の再設計か破棄が妥当。逆にリピートのみが高ければ、製品はいいがプロモーションが弱かったと考えられるので、広告・販促を見直して全国展開です。どちらも低かった製品は、全面的に見直しです」
テストマーケティングの費用は数千万円規模。最初に割高だという印象があった商品は、テストを経ることによって消費者の意見が反映され、逆に値ごろ感のある価格に修正されうこともあるとか。品質だけでなく値段にもいい影響が与えられるのなら大歓迎です!