「先発優位の秘密」『Big tomorrow』連載第56回(2013年3月号)

 新商品を発売すると、他社も似たような商品で追随してくる。追いかけられる立場の企業は、ライバル登場で不利にならないのか?身近な商品を例に探ってみた!


バンドエイド、セロテープ、宅急便…。このおなじみの商品名にこそ、先発品が優位な理由が隠されていた!
 トヨタ「プリウス」、花王「アタック」、アサヒビール「アサヒスーパードライ」。
これらの商品に共通するのは、新カテゴリーを創った先発品ということ。
「先発品は後発品に比べて有利。ビールのドライ市場は他社の参入が相次ぎましたが、最終的にアサヒの1人勝ちに。先発優位はマーケティングの常識です」
と語るのは小川孔輔先生。
 先発優位は数字でも裏づけられています。
市場での会社数(商品数)と参入順のシェアを調査したアメリカのデータがあります。(右下のグラフ参照)。
 1社の場合、独占なのでシェアは100%。2社(2つの商品)の場合はどうか?両社50%ずつと思いきや、先発が58.5%、2番手は41.5%。17%の差がつきます。
 参入する会社が増えても、先発優位の傾向は同じという結果が。つまり市場に参入するなら、早いほうがシェアを獲れるというわけです。

後発が参入してきたほうが先発の売上が伸びる理由
 どうして先発品が有利なのか?
「消費者がカテゴリー名を聞いた時、最初に連想するのが先発品です。なかには先発品がカテゴリー名として一般化したケースもあります。たとえば『バンドエイド』(ジョンソン&ジョンソン)、『セロテープ』(ニチバン)、『宅急便』(ヤマト運輸)は商品名ですが、先発品ゆえに市場に名前が定着し、カテゴリー名としても使われています。最近では『ルンバ』(アイロボット)もそう。『ロボット掃除機が欲しい』といわず、『ルンバが欲しい』という人が多いはずです」
 ただ、先発品が有利でも、他社が参入すれば損するのでは?
「むしろ逆です。他社が参入することで市場全体が広がります。広がった市場で後発よりシェアが獲れるので、かえって売上が伸びる場合が多いのです」

“後出しジャンケン”でどこまで勝てる?
 しかし、つねに先発品が勝つとは限りません。 
 後発には後発のメリットがあり、それを活かすことで逆転も可能です。
「後発のメリットはいくつかあります。まずプロモーションのコストが安く済む。ハイブリッドカーが登場したとき、トヨタはハイブリットを理解してもらうために莫大な広告費を使いました。しかし、後発はそれが不要。また、研究開発費も有利です。最たるものが、ジェネリック医薬品。ジュエネリックは先発メーカーの特許の切れたものをマネて製造するので、開発費がほとんどかかりません。だから安く販売できるのです」
 後発は市場に柔軟に対応できることも有利な点です。
「先発品がコケたら、後発はそれを見て改良したり、参入を止める決断ができる。つまり、後出しジャンケンできるのが最大の強みです」
 先発で荒稼ぎをするか、後出しで賢く稼ぐか。
 どちらの戦略を選ぶかは御社次第です。