「値引きとオマケの秘密」『Big Tomorrow』連載第3回(2008年11月号)

第3回では、小川先生の十八番、オマケのひみつをとりあげてみた。 リード: オマケ、キャッシュバック、ポイント割引…。おトクなのはいったいどれ?店はどれだけ儲かる?お客の心をくすぐる販売戦略のウラを覗いてみた! 割引料金とオマケつきではどっちがおトク?


缶コーヒーやペットボトルについているオマケは、コレクター垂涎のアイテム。ただ、オマケにコストをかけるくらいなら、そのぶん値引きをしてくれたほうがいいと思う人も多いはず。
 「オマケと値引きは、メーカーや小売店からみると、それぞれ意味が違うんです」
と解説するのは小川孔輔先生。
 「値引きは販売数量が増えないと売り上げが下がりますが、オマケは利益率が下がるものの売り上げは下がらない。また、値引きはブランドイメージを損なう恐れもある。飲料はブランドが重要なので、値引きよりオマケの戦略をとるんです」
値引きとオマケを使い分けて売り上げ増に!
 では、値引きはメーカーや小売店にとって損かというと、必ずしもそうとはいえません。
 「消費者には、あちこち店を回って安い商品だけを選んで買うチェリーピッカー(さくらんぼ摘み)とよばれる層もいれば、同じ店で買う安心感を重視する層もいます。前者をターゲットにした店は“そのとき限りの値引き(即時型)”で店頭に変化をつけ、集客に結び付けます。一方、後者をターゲットにする店は、ポイントによるキャッシュバックなどの“長期的な値引き(延期型)”によって来店頻度を上げ、売り上げ増を狙います。どちらも、ターゲットや販売戦略にマッチしていれば、値引きをしても損にはならないように考えられています」
 ちなみに値引きに即時型と延期型があるように、オマケにも種類があります。商品に直接つけるオマケは即時型で、メーカーが特定のブランドを売りたいときなどに使われます。一方、ポイントやシールをためて別の商品と交換するのは延期型で、小売店が顧客の来店頻度を高めるために行われます。
 「オマケも値引きも、実際はどれか1つの方法に限らず、複数の手法を組み合わせる企業が少なくありません。たとえばマクドナルドは、何月何日までビッグマック200円(値引き即時型)、クーポン(値引き延期型)、ハッピーセット(オマケ即時型)など、さまざまなセールスプロモーションを実施し、効果的に売り上げ増をはかっています」
精神的にトクをする新しいオマケも登場!
 ところで、缶コーヒーやペットボトルのオマケは、ここ1年ほどで姿を見かけなくなりました。
 「原材料の高騰でコストが増え、利益を圧迫したからです。資源価格が適正に戻るまで、メーカーもオマケをつけるのは難しいでしょう。しかし、その代わりに別のスタイルのオマケが出てきました。飲料水のボルヴィックは、商品を買うとユニセフにお金を寄付して井戸を作る『1ℓ for 10ℓ』というプログラムを実施。これは、社会的によいことをしたいという心理的なオマケといえます」
 今後は、単に損か得かという次元ではなく、ボルヴィックのようにオマケを通した社会貢献を購入の動機につなげるメーカーが出てくるかもしれません。

 販売促進の4つの方法
 時間   タイプ 即時型 延期型

 値引き 在庫が残っているとき、メーカーが特定のブランドをアピールしたいときなどに有効。短期間なので、消費者としては情報収集がカギになる
 例 洗剤、ティッシュペーパー
 ポイントによるキャッシュバックやクーポンの配布が代表的。次の来店につなげるのが狙い。来店頻度が増えれば、値引きしても売上は増える
 例 居酒屋

 オマケ
  商品に直接つけるオマケの他、増量やバンドルセール
 (数量をまとめて販売)もこのカテゴリー。実質的に値引きでも、売上が落ちないのが利点
 例 ペットボトル飲料
 「シールを集めたら抽選で○○をプレゼント」のように、継続して利用してもらうことを目的に行う。ブランド力の強いオマケだと効果的!
 例 ファーストフード、コンビニエンスストア