「ポイントカードの秘密」『Big tomorrow』連載第33回(2011年4月号)

 洋服の青山で買い物をしてたまったポイントをドトールで使ったら、ドトールは損をしないのか?そんな疑問から発した今回のテーマ。業種の異なる店で共通に使えるポイントカードの儲けの仕組みを探った!


企業が、他店でも使えるポイントカードを導入する意外なメリットとは?
 最近、「Tポイント」や「Ponta」といったポイントカードが普及しています。業種の異なる店でも共通に使えるため、ポイントが早くたまって非常に便利。
が、素朴な疑問もわいてきます。
A店で買い物をしてためたポイントをB店で使ったら、B店は損をしないのでしょうか?
「その謎を解くには、まず共通ポイントのシステムを理解する必要があります」
と語るのは小川孔輔先生。
「コーヒーショップや洋服店などの加盟店は、ポイント運営会社とポイントを売買しています。たとえばお客がA店で200ポイントを使ったら、A店はお客から受け取った200ポイントをポイント運営会社に売ります。一方、お客がB店から200ポイントもらった場合、B店はポイント運営会社から200ポイントを買うのです。共通ポイントは、いわば疑似通貨。お客がポイントで買い物をしたら、加盟店はポイントをあとで現金化しているのです」

共通ポイントカードを導入するもう1つの利点とは?
 では、ポイント運営会社はどうやって儲けているのでしょう?
「ポイントが疑似通貨だとしたら、ポイント運営会社はいわば両替屋。為替の仕組みと同じで、加盟店にポイントを売るときと買うとき“利ザヤ”で儲けているのです」
しかし、ここで新たな疑問が生じます。ポイント運営会社が利ザヤを得ているのなら、加盟店は損することに。
にもかかわらず、共通ポイントカードを導入しているのはなぜなのでしょうか?
「お客さんの年齢や居住地域、購買傾向などのマーケティングデータを入手できるからです。もちろん個人情報保護法の範囲内ですが、企業にとっては、どこの地域でどんなモノが売れているのかがわかるだけでも、貴重な情報なのです」
 さらに、新規顧客の獲得や既存客の囲い込み効果も期待できます。
「共通ポイントカードは加盟店が多業種になるほど、新規顧客の獲得や既存顧客の囲い込み効果が大きくなります。ただ、それも一業種一社が条件。もし、ドトールでもスターバックスでも同じポイントカードが使えるとなれば、どちらの店にとってもお客の囲い込み効果は半減するからです」
 消費者から見ると、より多くの店でポイントが使えるようになるのはうれしい。囲い込み効果が薄れても、ぜひ加盟店を増やしてほしいものです!