「ネットスーパーの秘密」『Big tomorrow』連載第34回(2011年5月号)

 買い物に行くヒマのないビジネスマンや重い荷物を運べない主婦の間で、利用が増えているネットスーパー。商品のピッキング、配達といったコストを考えると儲かるようには思えないが、実際どうなのか?


現代版の“御用聞き”とも言えるネットスーパー。なぜいま復活?
 昨年あたりから流行り始めたネットスーパー。値段は店舗と同じで、5000円以上なら配達もタダというところが多い。お客にとってありがたいサービスですが、ホントに儲かってるの?
「もともとスーパーは薄利のビジネスモデル。ネットスーパー事業はコストがかかるため、儲けを出すのは難しい」
と解説するのは小川孔輔先生。シミュレーションしてみると…。ネットスーパーの平均客単価は1回約6000円。店舗のスーパーの粗利率は25~30%ですが、ネットではミネラルウォーターや米など利益率の低い商品がよく売れるので、やや低めの25%に設定。配送コストを1件500円とすると、6000円買い物をしても、粗利はわずか1000円という計算に…。そこから人件費などの販売管理費を差し引くと完全に赤字です。

儲からない事業をどうやって儲かるようにした?
ネットスーパーが儲かりにくいことは歴史的にも証明されています。
「1999年にサンフランシスコでサービスを始めたネットスーパーの最大手ウェブバンは、利益を出せずに2年で営業停止に。同時期に日本でも参入する会社が相次ぎましたが、そのほとんどがうまくいかずに撤退しました」
 ではなぜ、いまになって参入するようになったのでしょうか?
「10年前は店舗を持たない倉庫型が多かったのですが、最近は店頭の商品をピッキングして届ける店舗型が主流になり、倉庫代がかからなくなったからです。また、ピッキングのスタッフも既存の人員を割り当てるなど、コスト削減の工夫が全体的に進んでいるんです」

ネットスーパーが狙っている“本当のお客”とは?
 しかしそれでも、先ほど試算したように収支は赤字。なのに大手スーパーがあえて参入する狙いは、何なのでしょうか?
「自社がやらなければ、他社に顧客を取られるからです。ふだんは自店で買い物する地域のお客さんも、ネットなら地元にこだわらずに他に流れる可能性がある。それをつなぎとめるために、利益の薄さを覚悟でやっている面があるんです。ネットスーパーでの売上は、店舗売上の10%が限度でしょう」
 ただ、地方では都心とは違う別の可能性も。
「いま地方で問題になっているのが買い物難民。クルマの運転ができない高齢者は買い物ができません。そういった人たちのために生活インフラとして、ネットスーパーが担う役割は大きくなっていくはず。そこに、これからの成長の可能性があると思います」

主なネットスーパーの比較
イトーヨーカドーネットスーパー  123店舗 5便/1日 最短3時間 315円(一定金額以上で無料)
マルエツネットスーパー 2店舗 4便/1日 最短6時間 525円(5000円以上は315円)
西友ネットスーパー 47店舗 4便/1日 最短3時間 525円(5000円以上で無料)