「廃棄弁当の秘密」『Big tomorrow』連載第14回(2009年9月号)

ほとんどのコンビニではこれまで、消費期限が切れた弁当は廃棄処分していた。一方スーパーでは、売れ残りを防ぐために消費期限が切れる直前に値引きをして販売。安くして売れば、そのぶん少しでも儲かるように思えるが、なぜコンビニは廃棄していたのか?


コンビニ本部が値引き販売したくなかった深い理由とは?

 このご時世、消費期限ギリギリの見切り品を目当てに買い物をする人も多い。ただ、値引き販売を行うスーパーと違い、一般にコンビニは消費期限が近づいても定価のまま。
「でも今後は、値引き販売に踏み切るコンビニチェーンが出でくるかもしれません」
と語るのは小川孔輔先生。
「コンビニ本部はフランチャイズ契約を結んだ加盟店に対し、消費期限が迫ったお弁当やおにぎりについて、値引き販売しないよう推奨してきました。ところが、今年6月、加盟店に対して見切り販売を不当に制限したとして、公正取引委員会がセブン-イレブン・ジャパンに排除措置命令を出しました。これにより、業界全体に値引き販売の波が広がることが予想されます」

値引き販売をすると、POSデータが狂う!
 売れ残りを廃棄すれば、加盟店はそのぶん損をする。値引きしてでも売り切ったほうが、儲かるはず。 
 ではなぜ、コンビニ本部はこれまで値引き販売に消極的だったのか?
「コンビには陳列スペースが限られているため、POS(販売実績)データを分析して、棚に置く商品の種類と発注量を決定しています。
 ところが値引きをすると、本来ならあまり売れない商品が売れるなどして、POSデータに狂いが生じる。分析の精度が鈍ると、結局は値引き販売頼りの発注が横行し、かえって加盟店の利益率が下がる恐れがあるんです。加盟店の経営が苦しくなれば、当然、本部も影響を受ける。本部が値引きに消極的なのは、加盟店に的確な需要予測に基づいた発注をしてもらうためなのです」
 ただ、需要予測の重要さはスーパーも同じはず。なぜスーパーは値下げしても平気なのか?
「スーパーとコンビニでは品出しの方法が違います。コンビニは工場でお弁当を作って配送するセントラルキッチン方式。前日発注が基本で、精度の高い発注が求められます。一方、スーパーは店舗内で調理するインストア加工方式で、店舗の売れ行きを見ながら品出しを調整。POSデータだけに頼っているわけではないので、値引きに踏み切りやすいのです」
 現場スタッフの権限も違う。
「スーパーのお惣菜コーナーは、担当社員が現場にいて粗利を管理しているため、臨機応変に値引き販売の判断を下せます。しかし、コンビニはアルバイトが中心で、店長以外は値引きの判断を下す決定権はありません。もしアルバイトが勝手に値引き販売したら、それこそ儲けを逃すことになります」
 消費者にはありがたい値引き販売も、コンビニ加盟店にとっては諸刃の剣。本当に値引き販売が浸透するのか、今後の展開に注目した。