「海外の値段の秘密」『Big tomorrow』連載第70回(2014年4月号)

 物価の違いによって、海外で販売される日本商品は値段に差がある。が、値段の違いは単に物価だけではなく、地域の天候やブランド戦略なども大きく関わっていた。いったいどんな因果関係があるのか?


日本と同じ商品が東南アジアで小分けの袋で安く売られている理由とは?
 海外に行くと、日本の商品が国内より高い値段で売られていたり、逆に激安で売られていることがあります。物価の違いもありますが、どのような背景で値段が決まるのでしょうか?
小川孔輔先生が解説します。
「日本と同じような商品なのに、激安で売られているものとしては、エースコックのインスタント麺。日本では約130円ですが、ベトナムでは15円。日本の『ほんだし』にあたる風味調味料はインドネシアでは3袋8円です」
なぜこんなに安くできる?
「理由は2つあります。物価の違いもありますが、これらは現地で生産するため、製造コストが抑えられるのが1つ。また、ターゲットは富裕層ではなく一般消費者なので、品質もその層向けのものでいいというのが2つ目の理由。日本人は品質には厳しいですが、そこまで高い品質でなくても受け入れられるため、安くできるのです」
 ただ、これらの商品は割高な面もあるとか。
「ターゲットである消費者は所得が低く、家計も厳しい。一度に大量のものを購入することができません。そのためメーカーは、インスタント麺はひと回り小さくしたり、調味料は袋に小分けにするなどして、必要なときに少しだけ買えるように売り方を工夫しています。が、お得用サイズとは逆の発想なので、相対的には割高です」

なんと、日本のぶどう1粒が100円もする!
 一方、高く売られている商品といえば果物。国内で1個150円程度のリンゴがロシアのスーパーでは1000円、1房300円くらいのぶどうが1粒100円も!
「高く売れる理由は、品質が高くて安全だというジャパン・ブランドがあるから。かつては電気製品や自動車がジャパン・ブランドの代名詞でしたが、いまは果物。ぶどうはロシアの寒冷な気候で育ちません。現地で生産できず、輸入に頼らざるを得ないという事情もあります。また、富裕層の存在も大きい。いまロシアでは“オリガルヒ”と呼ばれる新富裕層が台頭。品質が良ければお金に糸目はつけないという富裕層がいるからこそ、成り立つのです」

ユニクロはなぜ世界のどの国でも同じ価格なのか?
 これらとは違い、日本とほぼ同じ値段で売られているものも。それは、世界統一価格を打ち出しているユニクロです。
「フリースでもTシャツでも世界中同じ値段。日本円に換算すると同じ値段ですが、物価が安い国では実質的に高く売られていることになります。なぜこんな価格設定ができるのかというと、やはり富裕層をターゲットにして、彼らが満足するレベルの品質を実現しているから。日本ではユニクロは『安くて品質はいい』というイメージですが、中国では『高くて品質がいい』ブランドとして認知され、実際に所得上位5~10%の層に支持されています。だから、高めの価格でも受け入れられているわけです」
海外旅行に出かけたときは、ぜひ目にとめてみてください。

日本と海外で、同じ商品の値段を比べてみると?
ユニクロ…世界ほぼ同一価格(日本の値段をもとに現地の価格を設定しているため)
じゃがビ―(カルビー)…日本140円
  中国7.8元(約125円)アメリカ1.09ドル(約110円)
 にっこり(栃木の高級梨)…日本700円~800円
              ホンコン約120~160香港ドル(約1500円~2000円)
 即席めん(エースコック)…日本130円
              ベトナム3000ドン(約15円)
 味の素…日本300円(瓶入り750円)
     東南アジアでは3g小分けパック約3円で売っている