車を買わずに借りるなら、レンタカーでもいいはず。なぜいま、カーシェアリングが流行っているのか?レンタカーとはいったいどこが違うのか?ビジネスモデルから儲けの秘密まで、探ってみた!
カーシェアリングに進出しやすい意外な業者、不利な業者とは?
カーシェアリング市場は拡大を続け、2012年には100億円を突破する見込み(矢野経済研究所調査)ですが、なぜこんなに人気なのでしょうか?
「レンタカーと同種のサービスではあるものの、ユーザーから見るとカーシェアリングのほうが使い勝手がいいからです」
と解説するのは小川孔輔先生。
「レンタカーの利用は最低6時間からで、だいたい1日単位。ちょっとだけ車を使いたいという時にも、最低6時間分の料金が必要です。一方、カーシェアリングは15~30分単位で設定されているところがほとんど。気軽に利用できます」
また、レンタカーは利用後にお客がガソリン代を負担しますが、カーシェアリングは利用のたびにガソリン代や保険料を支払う必要がありません。
トヨタがカーシェア事業への進出を断念した理由とは?
カーシェアリングとレンタカーには、もう1つ大きな違いがあります。それは経営母体。レンタカーは自動車メーカーが中心ですが、カーシェアリングは主に駐車場会社が運営。
「じつは1990年代に、トヨタがカーシェアリング事業を展開しようとしたことがありました。が、自動車メーカーは貸し出せる車両を持っていても、それを駐車させておくスペースを持っていませんでした。また、当時は車の管理のために人を常駐させる必要もありました。結局、駐車場代と人件費でコストがかさむため、同社は進出を断念。カーシェアリング事業を採算に乗せるためには、車両を駐めておけるスペースと、現地に人を常駐させないで済む無人管理システムが必要なのです。この2つを最初から持っていたのが、駐車場会社だったわけです」
最近は無人管理システムがさらに進化。業界最大手のタイムズプラスは、会員が車にカードをかざすとドアロックが解除され、料金がクレジットカードで引き落とされる仕組みを導入。
「トヨタが進出しようとした1990年代に、こうした自動清算システムはありませんでした。駐車場会社は、もともとコインパーキングのインフラを持っており、それに加えて、自動清算技術がタイミングよく登場したのも追い風になっています」
サービスの小口化で、車の稼働率を高める!
短い時間単位で借りられるのは、お客だけでなく、経営する側にとっても魅力です。
「サービスの単位を小口化すれば、稼働率が向上します。稼働率が高まれば、施設や車を遊ばせておくムダを減らせ、効率的に利益が得られます」
平日と休日で客層を分けていることも、カ―シェアリング市場が伸びている理由の1つ。
「平日は経費削減で営業車の保有やリースを減らしている法人が主なお客。一方、休日はマイカーを持たない個人が主なお客。お客をうまく分けているので、平日も休日も一定の稼働率が見込めるわけです」
小川先生は、今後の展望をこう語ります。
「先行投資型ビジネスなので、業界首位のタイムズプラスでも営業利益は赤字。おそらく会員数10万人あたりが損益分岐点。いま同社の会員は約9万人なので、そろそろ黒字化でしょう」
若者のクルマ離れと相まって、今後も成長が期待できそうです。