「格安航空券の秘密」『Big tomorrow』連載第32回(2011年3月号)

 最近、春秋航空とかエアアジアとか…聞き慣れない航空会社が出てきた。これらはLCCと呼ばれる格安航空会社。LCCは、いったいどうやって安さを実現しているのだろうか?


チケット代が安くても航空会社が赤字にならない理由。それは…
 いま空のデフレが起きています。茨城―上海4000円(春秋航空)、羽田―クアラルンプール5000円(エアアジア)。これらはキャンペーン価格で、通常価格は数万円するものの、それでも大手航空会社よりはるかに安い。なぜここまで安くできる?「格安航空会社は、LCC(ロー・コスト・キャリア)と呼ばれているように、徹底したコスト削減をしているのです」
と語るのは小川孔輔先生。

 パイロット、客室乗務員の人件費も大手より格安!
「特に、大手と差が歴然としているのは人件費。経営再建前のJALのパイロットは年収2000万円前後で、今年1月からは年収1200万円に引き下げました。が、日本のLCCであるスカイマークのパイロットは平均803万7000円(平成22年3月期有価証券報告書)。引き下げ後のJALと比べても、3割も安いのです」
 人件費の安さは客室乗務員も同様。JALは引き下げ後で年収420万円ですが、スカイマークは363万9000円。
「LCCは大手をリタイアしたパイロットや客室乗務員を中心に再雇用しているので、高給なくても人員を確保できるのです」
 ちなみに海外のLCCは、機内サービスのカットも徹底しています。大手では、機内食や飲み物は無料ですが、春秋航空はインスタント弁当600円、ミネラルウォーター100円と有料。

 なぜいまになって小型機が急激に増え始めたのか?
 さらにコストダウンの要因として大きいのが機材の小型化。
「機材は大きくなるほど購入、リース費、燃料費が高くなります。そのたえ、たとえば同じ180人運ぶなら、300人乗りのジャンボ機より、LCCが主に使用している180人乗り小型機のほうが低コストです」
 では、なぜ大手は小型機で運ばないのか、疑問が生じます。
「かつては空港の発着枠が少なかったため、大手は少ない回数で大勢を運べるジャンボ機を使用していました。しかし、政府の規制緩和や新空港の建設などで発着枠が増え、いまは必ずしもジャンボ機である必要がなくなった。そこに小型機を擁するLCCが参入してきたのです」
 政府は今後も規制緩和を進めていく方針だとか。それについて、航空業界に詳しい桜美林大学の塩谷さやか先生が解説。
「すでに参入を表明しているLCCは数社あります。ただ、規制緩和はこれまで規制に縛られてきた大手航空会社にも恩恵を与えるはず。ノンフリル(機内サービスなし)で格安のLCCを選ぶか。それとも一定の快適さを求めて大手を選ぶか。選択肢が広がることは利用者にとっても歓迎すべきことでしょう」 
 格安派と快適派。あなたはどっち?